中兼和津次(かつじ)・東京大学名誉教授は8月28日、国家基本問題研究所で、「中国の経済発展と曖昧な制度」と題して講演、同研究所企画委員と意見交換を行った。
中国経済論が専門の中兼名誉教授は、この30年来言われ続けてきた「中国崩壊論」は間違いであったと述べ、その理由について①マイナス面だけを見てきた②中国の体制がなぜ維持できたのか全く説明していない③崩壊への期待があった、と分析した。
そのうえで、同名誉教授は、新たな視点からみた中国経済「強靭」論を展開、国家と民間の関係など「曖昧な制度」が持続的な経済成長の要因になったという。曖昧な制度は、自由(しばしば無秩序)な参入と激しい競争、盗作盗用(開発リスクの軽減)、(請負制度など)管理費用の低減などのダイナミズムをもたらした、と中兼氏は指摘する。
ただ、曖昧な制度は両刃の剣であり、今や曖昧な制度がもつマイナス面が目立ち始めている、ともいう。今後の方向としての法治と民主主義だが、真の意味では一党独裁下では不可能といえる。しかし、同名誉教授は、中国共産党は想像以上に柔軟で、既得権を維持するためには(制限的な)民主化も、所得再配分政策も実行する、との見方を明らかにした。
同名誉教授によれば、中国共産党体制存続の条件は、成長(所得増大)、統制、愛国主義と曖昧な制度のミックスにあり、腐敗の深刻化、格差拡大、社会不安、統治能力の低下が必ずしも体制の崩壊をもたらすことにはならない、という。