9月2日(金)齊藤元章・PEZY Computing社長は、国家基本問題研究所企画委員会において、『新産業革命、前特異点、そして特異点に備える』と題して人工知能開発の状況と、その結果予想される新たな産業革命などについて語り、櫻井よしこ国基研理事長をはじめ理事、評議員、企画委員らと意見交換をした。
氏は1968年、新潟県長岡市出身、新潟大学医学部を卒業された放射線科医で生体物理医学博士でもある。1997年に米国シリコンバレーに医療系システムおよび次世代診断装置開発法人を創業。2003年に日本人初のComputer World Honors(米国コンピュータ業界栄誉賞)を医療部門で受賞。これまでに研究開発系ベンチャー企業10社を創業し、自ら発明して出願した特許は50件を数え、現在はスーパーコンピューターのコアプロセッサ等を開発するPEZY Computing社長、液浸冷却装置を開発するExa Scaler社長、積層メモリを開発するUltra Memory社長など、アントレプレナーとしても活躍中。
氏は、次世代スーパーコンピューターが全く新しい世界を出現させ、新たな産業革命を起こすと説く。特異点(シンギュラリティー)とは人工知能が人間の能力を超えることで起きる様々な事象が発生するポイントと解釈されており、2030年から2045年頃が目安という。そこでは、小型熱核融合炉や人工光合成などにより資源問題が解決され、水耕栽培などの次世代植物工場により食糧問題が解決し、旧来の兵器が使えなくなるなど、地球規模の変革が訪れると予想する。したがって、次世代スーパーコンピューター開発をリードすることが、きわめて重要であるとのこと。
さて、現在の人工知能研究は過渡的段階ではあるが、各国が鎬を削って挑戦している状況で、その中で中国の開発スピード、開発予算が群を抜いているとのこと。その結果、今年6月に発表されたスパコンの処理性能ランキングで中国の「太湖之光」が第1位、また運用台数でも米国を抜きトップに立ったという。わが国は、このような状況を認識し、国民にも啓蒙し、国家戦略として十分な予算を確保し開発して、来る特異点を主導することが国益となり、全人類の利益にも供すると訴えた。
(文責 国基研)