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2018.08.24 (金) 印刷する

「FinTechから見通す我が国の金融業の未来」 内野逸勢・大和総研主席研究員

内野逸勢・大和総研主席研究員は、8月24日、国家基本問題研究所の定例の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、「FinTechから見通す我が国の金融業の未来」と題し、10年後を見据えたわが国の金融業の姿と課題などについて語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と意見交換した。

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前回の来所の際に氏は、地方創生の考え方と政府の取り組みを説明し、その中でITを活用した発想により、地方経済がいかに活性化するかについて語った。今回は、そのIT技術が金融の世界をどのように変革していくのかについて焦点を当てた。

そもそも「FinTech」とは、Finance(金融)とTechnology(技術)をつなぎ合わせた造語で、ICT(情報通信技術)を駆使した革新的な金融商品・サービスの流れのこと。電子決済代行業がその代表的な業種になるが、その拡大傾向は続いているという。

その背景として、主要国・地域の大手銀行に対する投資家の評価を見ると、リーマン後に一時回復したものの、米国を除き低潮に推移。この隙間にモバイルアプリなどを使用したチャレンジャーバンク(既存の銀行に挑戦するという意味)が台頭してきており、顧客の奪い合い状況を呈しているとのこと。

例えば、個人の借り手と個人の貸し手を、ネットを介して繋ぐことにより、金融機関の隙間を埋める働きをする業種があり、これをP2Pレンディングという。これにより、既存の金融機関が得ていた利ザヤをなくし、少ない金利での貸し借りが実現する。その他の事例として、電子マネー、モバイル決済、AI投資、ロボアドバイザー、クラウドファンディングなど、様々な発想が登場しており、今後の推移が大いに気になるとのこと。

さらに、わが国における金融業をめぐる法制が、FinTechに対応してない状況があり、既存の銀行法、預金保険法、貸金業法、出資法、利息制限法、金融商品販売法、投信法、保険業法などが、いかに対応していくかも注目されるという。

今後、さらにこの傾向が進展していくと、個人の情報をクラウドが一元管理するようになることも考えられ、様々な問題が惹起される可能性があると指摘。バランスの取れた発展が重要ではないかとして締めくくった。

内野氏は、1990年大和総研に入社、大蔵省・財政金融研究所出向などを経て、現在金融調査部担当部長。

(文責 国基研)