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2019.07.11 (木) 印刷する

【韓国情報】朝鮮日報の偽善批判する韓国良識派 西岡力(国基研企画委員兼研究員・麗澤大学客員教授)

 7月4日、日本が韓国に対して半導体素材の輸出への優遇を廃止した措置に対して、韓国では文在寅政権と左派与党、左派マスコミだけでなく、文政権を批判してきた保守野党や保守マスコミも批判の声を上げている。しかし、一部の良識ある知識人らは昨年10月の戦時労働者に対する最高裁判決を無効にすることなしに日韓関係の改善はないと冷静な判断を求めている。
 保守派のリーダーである趙甲済氏が主催するニュースサイト「趙甲済ドットコム」では、そのような論説が多数アップされている。趙甲済氏自身もYouTubeの「趙甲済テレビ」で1965年の日韓請求権協定は司法を含む韓国全体を拘束するという国際法の常識を視聴者にわかりやすく説いていた。
 ここでは、反日感情をあおり続けてきた保守系韓国紙、朝鮮日報が、日韓関係悪化を心配するのは偽善だと鋭く批判した評論を紹介する。
 韓国政府は6月、朝鮮人戦時労働者問題の解決策として、日韓企業による共同基金を設置して原告に「慰謝料」を支給する提案を行い、日本に即時に拒否されているが、朝鮮日報は日韓関係悪化を憂慮する社説を書いた。評論はこれを独自の視点から全面的に批判したものだ。このような常識の通じる韓国人がかなり存在することを忘れてはならない。

過去の記事はこちら

[コラム]韓日外交問題に対する朝鮮日報の態度に問題が多い朝鮮日報は本当に韓・日関係破綻を憂慮するならば、その最も大きい原因である強制徴用賠償判決の無効化から主張せよ

2019年6月21日
ペンネーム太極党(趙甲済ドットコム会員)

 
 久しぶりに朝鮮日報インターネット版に入ってみた。 やはりそうだった。 今日付け(6月21日)同紙社説の題名は「1時間で拒否された『強制徴用提案』、韓・日これで良いのか」だ。 題名もそうだが内容も心配なので一言いいたい。
 この社説の内容は、いわゆる「強制徴用賠償判決」と関連して、わが政府の初めての公式立場に対して日本が拒否した事実を取り上げて、韓日関係破局を憂慮すると論じたものだ。 社説は「韓・日両国は地政学的に最も近くて自由民主主義と市場経済の価値を共有する隣国同士だ。韓・日関係が悪化すれば北朝鮮の核問題解決のための韓・米・日共助に亀裂ができ、韓半島安保のための軍事協力にも支障をきたす」とし、このような正常ではない状態をいつまで放置するか、という批判で締めくくっている。
 間違っていない批判ではあるが、これは良識ある市民ならば誰でも知っているスローガン提唱水準だ。問題は社説のあちこちにはらんでいる偏向的認識と朝鮮日報という媒体の論理矛盾的、偽善的形態だ。

 周知のように文在寅政権になって韓日関係が急冷することになった最も大きい要因は「強制徴用賠償判決」とこれに対する政権の態度だ。その判決で国内にあるいわゆる「日本戦犯企業」の資産を差し押さえることができるようになったのだ。国際外交慣例と普遍的常識に照らしてみれば極めて政略的な「政治判決」ということができる。これは既存の歴史的判断と国家元首の統治権も否定したものだった。金泳三、金大中、盧武鉉各政権の行政的判断と当時与党の政治的判断まですべてを否定した判決だった。
 朝鮮日報社説で触れていることからも推察できるように、日帝時代に朝鮮人が当時の戦犯企業に徴用工として連れて行かれ被害を受けたという部分は1965年の韓日請求権協定によって終結した問題だ。ところが、それから数十年がすぎて我が国裁判所は、多数の国内の日本企業を「戦犯」として取り扱って、すでにすべて終わったことを我が国の一方的な論理でひっくり返してしまったのだ。
 万一、日本の裁判所が韓日請求権協定を否定して、現在の日本政府が「過去の池田内閣、佐藤内閣の判断には問題があったし、韓日協定は拙速だったので認められないから、その時韓国が持っていった金を返せ」というならばどうするか。それによってポスコのような企業の日本支社資産の差し押さえをするならばどうするか。これは戦争の理由になるほどの重大な事態だ。

 どこの国であっても、国交を結んだ国に進出した自国民と自国企業の財産が強奪されるのを傍観しない。これは日本だけはなく、どこの国でも見過ごせないことではないか。ところが、朝鮮日報社説は韓国側が韓・日間の外交協定をひっくり返したことに対して日本側が防御することに対しては「わが国政府が何もせず、安倍政権も韓国に対する批判の雰囲気を国内政治に利用し、韓・日関係は今最悪の対決局面に入り込んだ」と書いている。
 昨今の韓・日関係でわが国政府が何もしないという朝鮮日報の表現は妥当なのか。いわゆる強制徴用賠償裁判の結果は朴槿恵政権が非常に憂慮した問題だ。それに対する措置と外交的努力を「積弊」だとして追及して梁承泰(ヤン・スンテ)前大法院長を逮捕したのが事実上、文在寅政権ではないのか。
 換言すれば強制徴用賠償判決による韓・日関係の急冷は文在寅政権が意図したことではないのか。これに対して単純に「わが政府が何もしない」という式の表現をするのは適切でない。特に自国企業の資産が没収される危機に対する安倍政権の対応に対して「政治に利用する」と表現するのは非常に不適切だ。事実とかけ離れ韓日関係改善にも決して役に立たない。特に隣国の内政をそのような形で評価するのは主流新聞の社説がすることではない。

 確認されたところによれば、梁承泰前大法院長は日本との外交問題、国際的見解などを考慮して強制徴用訴訟を慎重に処理しようとした。朴槿恵大統領が梁承泰前大法院長に強制徴用訴訟を大法廷(最高裁判事全員が参加)に回すことと、慎重に判断することを数回にわたり依頼したのも同様の理由であった。朴槿恵大統領の場合、2012年の大統領当選の時からこの問題を非常に憂慮していたという。
 しかし昨年10月大法院大法廷が強制徴用被害者に対し日本企業が賠償しろとの判決を下した時、ほとんどすべての言論は歓迎した。朴槿恵政府と梁承泰前大法院長を非難する声が大きかった。保守系といわれる東亜日報でさえ、社説で「遅滞した正義は正義ではない。特に我が国司法府がそれを一助したという事実が苦々しい」として、裁判が遅れたことに対して梁大法院長を非難した。
 朝鮮日報の場合、「梁承泰前大法院長は朴槿恵政府を満足させるために裁判を遅らせて、被害当事者救済を不可能にしたという批判を避けることはできない」と批判した。日本との外交問題などを憂慮して裁判に慎重を期そうとした梁前大法院長の態度を「朴槿恵政府と共謀して裁判を遅延させた」と非難した。朝鮮日報が偽善的であるのはそのような批判を堂々としておいて、わずか数ヶ月後には日本との外交摩擦を憂慮する社説を平気で出すことだ。

 李明博前大統領が任期末の独島(竹島)を訪問し、その後に羅卿瑗、全希卿、姜孝祥韓国党議員らが独島(竹島)を訪問した時にも日本との関係は非常に膠着した。ところがこのような独島(竹島)訪問を主流新聞は非常に好意的に報道した。朴槿恵政府が日本との接触を控えるたびに、意地を張るように日本に批判的だったのが主流新聞だった。当時、朝鮮日報、東亜日報が常に安倍政権を攻撃し続けていたということは、知るべき人は皆分かっている。 言論が反日の雰囲気を作り、世論がそれについて行けば、その空気を政権が安易に冷たくあしらうことは難しい。そのようにして社会全般に反日情緒が拡大するのだ。
 そうでなくても反日的な文在寅左派政権が日本との外交をよりためらいなく最悪へ推し進めることができたのは、主流新聞のそのような反日的態度が一助となったと言える。政権に自分たちを牽制する勢力がないと感じさせるためだ。朝鮮日報は今になって韓・日関係が正常ではないことについて文在寅政権を少しずつ批判するのでなく、反日情緒拡散の先頭に立ったことから反省しなければならない。
 朝鮮日報は本当に韓・日関係破綻を憂慮するならば、その最も大きい原因である強制徴用賠償判決の無効化から主張しなければならない。それが現実的に難しいならば、判決にともなう国内日本企業に対する差し押さえ措置を撤回できる方針が用意されるように努力しなければならない。それなしで叫ぶ韓・日関係破綻の憂慮はむなしい声であり、偽善になるだけだということを肝に銘じなければならない。

2019年6月21日[ 2019-06-21,05:43 ]