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2021.10.25 (月) 印刷する

『中国の政治戦 2040年までに戦わずして勝つ』 ケリー・ガーシャネック氏

中国政治戦の専門家ケリー・ガーシャネック氏が10月22日、国家基本問題研究所企画委員会に来所し、『中国の政治戦 2040年までに戦わずして勝つ』と題して語り、櫻井よしこ国基研理事長をはじめ企画委員らと、意見を交換した。

【概要】
政治戦という言葉は、米国のG・ケナン氏が提唱した用語で、戦争に至らないあらゆる手段を用い国家目標を達成することである。対して中国共産党は、これを総力戦あるいは無制限戦と認識する。

その目的は、国内の統一と抑圧、地域と世界の覇権獲得である。その方法は、政府、組織、団体、国際機関、個人に影響を与え、中国の政策や行動を支持させる。加えて、敵や批判者を分断し、委縮させ、崩壊させる。

中国の戦略を列挙する。まず統一戦線だが、中国共産党の支援を拡大して敵を分断する。対外的にはBRIなどがある。次に心理戦、宣伝戦、法律戦の3戦がある。そして、積極手段として、暗殺などの強制力や隠密作戦、サイバー戦などがある。さらに、軍事的威嚇も見逃せない。現実に東シナ海、台湾、南シナ海では厳しい行動をとっている。

戦術的な手段は様々である。例えば、外国大学への潜入は、共産党シンパの教授を取り込み、学生団体を組織し、孔子学院を作るなど、多様である。あるいは、ソーシャルメディアを操作して、親中世論を醸成するなど、目に見えない浸透工作を継続している。

メディア戦も熾烈である。中国共産党が運営するグローバルネットワークを構築するため、外国メディアを買収し、検閲も強化する。

このような政治戦を仕掛けられている殆どの国は、攻撃を受けていることに気付かないか、対応を怠っている。社会が開放的な民主主義国は、一般に政治戦に脆弱である。

日本をターゲットにして、様々な活動を積極的に仕掛けてもいる。例えば、政治家、学者や報道関係者などを接待してエリート層を確保する、琉球分離主義を煽って沖縄と中国が一体であると教育する、あるいは、急進的活動家グループへの支援などである。

日本への提言は、速やかに国家レベルで政治戦に対抗する機関を作る必要があるということである。

教授は最後に、このまま日本が拱手傍観していると、習近平氏の「中国の夢」が2040年までに実現することになる、と警鐘を鳴らした。

【略歴】
過去3年間、台湾の国立政治大学で客員研究員を務め、豪州のキャンベラ大学で非常勤教授を、米国ハワイ州のGRMF研究所でシニアフェローを、タイの王立陸軍士官学校及び王立海軍兵学校の特別客員教授を、またタマサート大学法学部の上級研究員を8年務めてもいる。以前には、米国防長官室の戦略プランナー兼スポークスマンや、CSISでシニアフェローを務め、元米海兵隊員として軍務の経験もある。
近著“Political Warfare -- Strategies for Combating China’s Plan to ‘Win without Fighting’”Marine Corps University Press, 2020.がある。 (文責 国基研)