令和6年4月16日(火)、国家基本問題研究所は、定例の月例研究会を東京・内幸町のイイノホールで開催しました。
先週ワシントンDCで行われた日米首脳会談を振り返ると、厳しさを増す対中戦略環境への日米による対応、あるいはわが国独自でなすべきことなど、具体的な課題が見えてきます。そこで、今回は「今、日本がなすべきこと」というテーマを設定し、日米中の関係を切り口に、外交、経済、軍事の面から深堀できる登壇者を招きました。
まず政治外交面から日米関係を外交の現場で支えてきた杉山晋輔元駐米大使、次に経済面からアベノミクスのブレーン・本田悦朗元内閣官房参与、軍事面から米海軍大学でも教鞭を執った理論派武人・武居智久元海幕長。そして司会は櫻井よしこ理事長というメンバーで議論を深めました。簡単な概要を以下に紹介します。
【概要】
●杉山晋輔・元駐米大使
今回の岸田首相の訪米では、米国の日本に対する期待の大きさが伺える。米議会演説での高評価という外交成果を上げた首相が帰国すると、その成果を試すかのようにイランがイスラエルに対し武力行使をした。演説で「米国のグローバル・パートナー」と岸田首相は述べたが、その覚悟を実行に移すことが求められる。
わが国はエネルギー資源の多くを中東に依存する。まさに国益に直結しており、知恵を絞って速やかに対応しなければならない。日本の外交はあくまで対米追従でなく、同盟の本質を守りながら、国益を重視した自国の政策を進めることが肝要である。
●本田悦朗・元内閣官房参与
米中経済対立が続く中、経済を対外膨張の手段に使う中国。その中国の経済成長を支えてきたのが日本政府の経済支援や日本企業の技術移転である。その関係は今も継続し、習近平氏の目標である「中国の夢」の実現を、日本が支える構図に変化はない。
例えば、中国はアジアスーパーグリッド(ASG)構想というアジア全域で再生可能エネルギーの相互活用を行う送電網構築を進める。中国企業が日本の土地を買い、中国製太陽光パネルを敷き詰める。それらをアジア全域と結び、中国がコントロールするなら、日本の電力インフラを中国が支配することになる。絶対に阻止しなければならない。
●武居智久・元海上幕僚長
先の日米首脳会談の軍事面での成果は、日米指揮統制機能の統合や拡大抑止の議論などが明記され、実務と抑止の面で評価できる。ただし後方面ではまだ課題が残る。わが国がウクライナ戦争から得た教訓は、長期消耗戦への備え。仮に抑止が失敗した場合、弾薬の備蓄、サイプライ・チェーンの分散や産業基盤の持続性が鍵になることは明らかである。
習近平主席は2027年台湾侵攻準備を命じたが、わが国はそれまでに対抗する準備を終えなければならない。少なくとも日米で合意されたことは速やかに実行されるべきである。
●まとめ:櫻井よしこ国基研理事長
本日は始めに、杉山氏から日米関係の見方が、続いて本田氏から中国経済の見方が紹介されました。米中両大国の狭間でわが国は、武居氏が指摘する可能な軍事的備えを早急に行うなど、「今、日本がなすべきこと」を実行に移すことが必要です。今後とも皆様方とともに声を上げていきましょう。
本日の詳細は後日、会報誌「国基研だより」やホームページで紹介する予定です。ご期待ください。
(文責 国基研)