5月10日、片山さつき参議院議員が国基研に来所、企画委員会で性同一性障害特例法の問題に関連し、性別変更を厳格化することが必要であると訴えた。
性同一性障害特例法(いわゆるLGBT理解増進法)は、平成16年に施行された。複数の医師から性同一性障害の診断を受けたうえで、家事審判を経て戸籍上の性別を変更する際の要件を定めた。その要件は①18歳以上②結婚していない③未成年の子がいない④生殖腺がないか生殖機能を永続的に欠く状態⑤変更後の性別の性器に似た外観を備えている、という5つである。
これをめぐっては、④の生殖不能要件(生殖機能を喪失する)が昨年10月に最高裁にて憲法違反と判断された。加えて、⑤の外観要件(性器の外観を他の性に近づける)についての憲法適合性が現在争われている。
今後の展開次第では、性別適合手術などを受けずに精神的判断のみで戸籍上の性別を変更できる可能性があることを強く懸念するものである。
手術要件が撤廃された場合、精神的判断のみで性別変更が認められる可能性があるのだが、性同一性障害と「なりすまし」とを峻別することが困難になる。法的男性である母親、女性である父親が出現することもありうる。極論かもしれないが、出産する男性が誕生することも考えておかなければならない。そうなれば日本の戸籍制度を大きく揺るがす問題になる。
生きづらさを抱えた性的マイノリティーへの配慮は当然である。しかし、不安や懸念を抱くマジョリティーの言論が「ヘイト」と一括りに封殺される現状は、あるべき姿ではない。
一方、立憲民主党は、昨年3月、同性婚を法制化するための婚姻平等法案を提出した。法案の内容は、民法を改正して、同性間での婚姻を認め、男女間の婚姻を前提とした「夫婦」や「父母」などの文言を全部撤廃して「婚姻当事者」や「親」など性中立的文言に変更するというもの。仮に法案が認められると、次世代の子供を産み育てるためのわが国の婚姻制度が、根本から崩れる危険があり、そもそも〝言葉狩り〟言論弾圧につながる。
このような問題に対しては、見栄えのいい多様性の尊重やそもそも戸籍制度の無い外国での事例に安易な迎合という言葉で片づけてはならない。国家的課題として腰を据えた慎重な議論が必要であると苦言を呈した。
(文責 国基研)