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2024.05.15 (水) 印刷する

「沖縄問題の深相-本土からのアプローチ視角について-」 岡島実弁護士

5月10日、沖縄在住の岡島実弁護士が4年ぶりに来所、沖縄の現状を報告し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。

沖縄問題は、地政学的位置と歴史的背景を考えると、一地域に限定された問題ではなく、国家的重要課題と認識しなければならない、という岡島氏の現地沖縄からの視点は新鮮であった。報告の概要は以下のとおり。

【概要】
14世紀後半、かつて中国大陸の福建省から渡来した人々は、門中(むんちゅう)という血縁団体を作り、久米三十六姓(蔡氏、程氏など)と呼ばれた。三十六という数字は中国ではとても多いことの意味で、その宗家が分家して儀間本家、久米具志家、久米翁長上原家などに広がり、主として中国との貿易に従事してきた。

現在、沖縄の玄関口に立つ龍柱(高さ15メートルで道路の両脇に立つ中国風の門柱)だが、建設時に中国の業者が中国産の石材を使い、事業費も中国に流れることから、交付事業として相応しいのかとの問題が生じた。その近傍は久米三十六姓の末裔が住み着き久米村と呼ばれた。久米村の福州園の隣に孔子廟も建設されるのだが、その際に尽力したのも久米氏の人たちである。

彼らは沖縄全人口の5%程度と思われるが、地方で多くの土地を持ち、知識人の多くを排出してきたことから、その影響力は少なくない。このように、福建省から渡来した人たちの影響が、単なる歴史上の話ではなく現在も政治的な力を持って現れるのが沖縄なのである。

加えて、沖縄において、薩摩侵攻、琉球処分、沖縄戦、基地問題は被害者意識の元になり、さらに琉球独立論が加わり、左派の煽動工作と呼応する構図がある。

果たして沖縄は、かつて琉球「王国」と呼ばれるような独立した存在だったのか。先史時代は本土の縄文文化圏に含まれ、琉球王朝時代における王家の尚氏は、和文で記録し和語を話したように、本土文化圏であったことが分かる。この時代に書かれた琉球王府国の正史『中山世鑑』は漢字かな交じりの和文で書かれ、源為朝との関係も記している。また王府が地方の役人に発布した辞令書も和文で書かれている。

他方、後の歴史書『中山世譜』は漢文語で記されたもので、久米姓が勢力を持っていたことが伺えるが、琉球が独立していた根拠とはいえない。

以上のことを下敷きに沖縄戦を見直してみたい。八原博通著『沖縄決戦』は沖縄戦を理解するための必読書である。日米含め戦没者数は20万人で、日本軍は9万4千。一方、戦没沖縄住民9万4千のうち、5万5千が戦闘参加者であり、巻き添えになった一般住民は3万8千である。今も続く戦没者遺族年金や米軍基地使用料、宮古島をめぐる自衛隊基地の問題にもは、久米姓の方々がかかわっている。

沖縄は民族的、歴史的、文化的に日本であり、明確に日本に帰属する。このことを根底に、日本である沖縄の歴史・文化と県民の生活(領土・領海)を守るという姿勢で、本土から積極的に沖縄にアプローチしていく必要がある。

【略歴】
昭和39年、愛知県生まれ。早稲田大学第1文学部卒、平成13年弁護士登録(沖縄弁護士会)。15年から日弁連人権擁護委員。25年から30年まで同常任委員。25年から28年まで同副委員長。26年成立の沖縄県障害者権利条例の制定に尽力。著書に、『閉ざされた〈戦後空間〉を開く―形象の国・日本を解き放つ―』(共著、ミネルヴァ書房)、『裁判員制度とは何か』(生活書院)、『南風原事件』(共著、現代人文社)など。

(文責 国基研)