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2011.12.09 (金) 印刷する

首相は「国体護持」を表明せよ 会員 児玉朗

 環太平洋経済連携協定(TPP)参加の是非が国論を二分している要因の一つに、国体がさらに脅かされるのではないかという危機感がある。野田佳彦首相は「国益は守る」という抽象的な発言でなく、国益の定義を国民に説明し、不安と危機感を払拭するため、「国体を護持する」とまず表明すべきである。
 その上に立って、TPP自体が国の独立に関わる由々しき問題を抱えていることから、国益を損なうと懸念される全ての事項を洗い出し、時間はかかるであろうが、その対策を含めてネガティブリスト(自由化の例外リスト)に盛り込むことが重要だ。重要な懸念の一つにISD条項(外国の投資家が不平等な扱いを受けたとして相手国を提訴できる条項)がある。「忖度(そんたく)」という言葉をもつ日本人にはISD条項はそぐわない。賛成論者は日本企業も同じく相手国を訴えることができると反論するが、訴訟合戦になってはそれこそ国益はかなわないだろう。
 さらに玄葉外相の発言を参考にすると、TPPに絡めて移民計画を推進しているようである。我が国の少子化や労働力の問題を移民によって解決しようとするのは、少し短絡的に過ぎないか。真の問題と課題を見極めて、対策となる政策には慎重の上にも慎重な姿勢が必要である。移民政策を進めてきた欧州各国が現在抱える問題と、シンガポールなどうまくいっている場合とを十分考慮して、民族問題を日本国内に持ち込むようなことがあってはならない。
 それでもなお、反日国と親日国を一括りの条項で済ませるのは無理があるのではないか。首相が黙して語らずでは危機感が増すばかりである。