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2011.12.05 (月) 印刷する

看過できない金融部門への影響 岩崎良二

 もう一点どうしても指摘しておきたい点がある。環太平洋経済連携協定(TPP)の金融保険部門への影響である。2010年3月末時点でゆうちょ銀行とかんぽ生命を合わせて、我が国国債の3割強を保有している。一般銀行と保険会社を全て合わせて3割保有であることを考えると、単体としての保有率は群を抜いている。
 郵政事業は国営から民営への過渡期にあり、郵政民営化論と議論が交錯するが、政府が株式を保有する特殊会社であることと、高い国債の保有率は相関している。もちろんその負の面も承知しているものの、その議論はひとまず置く。私が言いたいのは、良きにつけ悪しきにつけ、順当な国債消化のためには、ゆうちょとかんぽは欠かすことのできない金融機関であることだ。
 TPPに加盟した場合、加盟国なかんずく米国の企業は、民業圧迫としてゆうちょ、かんぽの完全民営化を求めてくることが予想される。完全民営化された場合、ゆうちょとかんぽはこれまで通り国債を購入してくれるだろうか。
 企業融資を行わない銀行であるゆうちょは、増益のためには効率よく運用しなければならない。そうであるならば、そのポートフォリオから利率の低い日本国債の幅を狭めてくるのではないか。リスクの分散の点からも同様である。ゆうちょとかんぽが完全民営化した場合、将来、日本国債の札割れという最悪の事態を想定しておく必要があるのではないか。我が国を取り巻く国際情勢は小泉政権の時とは明らかに変わっている。TPPの面から郵政民営化を再考すべきと考える。