【提言】 日本政府は慰安婦問題で正しい対外発信をせよ
平成24年10月2日
公益財団法人 国家基本問題研究所
9月23日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに、慰安婦問題に触れた野田佳彦首相のインタビュー記事が載った。
その内容は、同問題に関する国際的誤解を解き日本の名誉を回復するどころか、逆に誤解を拡大し日本の名誉を一層傷つける由々しきものである。野田首相および関係者の責任を厳しく問わざるを得ない。
まず同記事は、慰安婦を「性奴隷」(sex slaves)と説明している。首相官邸は単独インタビューに応じる際、条件として、記事の事前チェックを求めなかったのか、チェックしながら見過ごしたのか、あるいは基本的認識が間違っているのか。
最低限、記事が出た段階で即座に、「性奴隷」という表現を削除するよう新聞社側に申し入れるべきであった。特にウェブ版は容易に訂正可能で、記事のアップデイトは日常的に行われているにも拘らず、官邸はそれすら行っていない。
引用されている野田首相の発言も、日本軍が朝鮮人女性を『強制連行して売春を強要した』事実はないという肝心の点にまったく言及していない。
また、首相は元慰安婦への慰謝料提供事業(アジア女性基金)を韓国側が不十分としたことが「心ある日本人の感情を傷つけ、残念」「まず基金の評価を改めてもらいたい」としたうえ、さらなる償いについて韓国側と「水面下でやり取りしている」とも述べた。外交交渉の手の内を明かす必要はどこにあるのだろうか。日本は小出しの対応でまたまた禍根を残すのではないだろうか。
【提言】
1.首相官邸は、ただちにウォール・ストリート・ジャーナル紙に対し「性奴隷」という表現をウェブ版から削除するよう求めるとともに、この表現が紙面に現れ、今日に至るまで訂正されていない経緯を国民に対し明確に説明してほしい。
2.野田首相は、今後、慰安婦問題に関して対外発信するあらゆる機会において、『軍による強制連行』などなかったという最も重要な事実の指摘を忘れてはならない。