2017年3月の記事一覧
対北宥和路線への逆戻りなどありえない 島田洋一(福井県立大学教授)
インド有数の戦略家ブラーマ・チェラニー氏が、ジャパン・タイムズ(3月20日付)で対北朝鮮政策の見直しを提言していると教えられ、読んでみた。氏は国基研とも関係が深く、特にその中国論は鋭いが、この北朝鮮論には、首を傾げざるを得なかった。 ●新味なきチェラニー氏の新戦略 チェラニー氏はまず、米国による最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備は、北朝鮮や中国における攻...
NHKは政治的に中立だと言えるのか? 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
筆者は海外のニュースに興味があり、毎朝7時からNHKのBS海外ニュースを見ている。毎週土曜日は「ニューヨークから」と題して京都生まれの米国人タレント、マイケル・マカティア氏の現地報道があるが、大統領選挙前後から一貫してトランプ大統領の批判報道ばかりを流し続けている。内容も一方的で、NHKの「政治的中立」はどこへ行ったのかと首を傾げざるを得ない。 もともとニューヨーク州はリベラルな土地柄で、民...
米国抜きでも日本はTPP推進に全力を 大岩雄次郎(東京国際大学教授)
環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership:TPP)は、周知のように、2006 年に発効したシンガポール、ニュージーランド、チリ及びブルネイの4カ国によるP4協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)を拡大発展させたものである。そのP4協定は「環太平洋の広範な経済統合を促進する手段」(「...
ドイツでも独自核武装論 米新政権に拭えぬ疑念 三好範英(読売新聞編集委員)
マティス米国防長官による北大西洋条約機構(NATO)支持の発言にもかかわらず、トランプ政権の安全保障政策への懸念から、ドイツで米国の核の傘に頼らない核抑止力を持つべきかどうかの議論が起きている。日本と同様、平和主義の傾向が強いドイツでの核論議は、トランプ政権の政策次第では欧州での安全保障環境が大きく変わる可能性を示している。 ドイツを代表する週刊誌シュピーゲル(電子版)は、昨年11月の米大統...
飽和攻撃の能力アップ図る北のミサイル発射 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
6日朝、北朝鮮は再び複数の弾道ミサイルを発射して、日本の排他的経済水域のほぼ同じ海域に同時弾着させた。7日の声明で北朝鮮は、「在日米軍基地を標的とした」と述べた。1日から始まった米韓合同軍事演習に対する反発であろうが、軍事的には飽和攻撃能力を高めることに他ならない。飽和攻撃とは、相手の迎撃能力を上回る攻撃を行うことだ。 北による地上からの弾道ミサイル同時発射は、昨年8月3日の2発と、9月5日...
教科書から「聖徳太子」を抹殺するつもりか 髙池勝彦(弁護士)
2月14日、文部科学省は次期学習指導要領の改定案を公表し、パブリック・コメントを募集している。 文科省の左翼的体質はかねてから指摘されていたことではあるが、今回驚いたことに聖徳太子を抹殺しようとしていることが明らかとなった。 中学校学習指導要領には、「『律令国家の確立に至るまでの過程』については、厩戸王(聖徳太子)の政治、大化の改新から律令国家の確立に至るまでの過程を、小学校での学習内容...
ミサイルだけではない北は最大の毒ガス大国 黒澤聖二(国基研事務局長)
マレーシアにおける金正男氏殺害事件にからみ今、にわかに注目を集めている化学兵器VXガスは、化学兵器禁止条約(CWC)で製造、保有、使用が禁止されている。しかし、北朝鮮はCWC非締約国であり、条約に拘束される法的義務はない。このことは何を意味するのか。 まずCWCについて概観しておきたい。CWCの前身は1899年の「毒ガス禁止宣言」であるが、これが毒ガス弾のみを禁止したと解釈され、1915年の...
中国は金正男氏を見殺しにした? 矢板明夫(産経新聞外信部編集委員)
長年中国の庇護下にいた北朝鮮の金正男氏がマレーシアの空港で殺害されてから2週間が過ぎた。北朝鮮の工作員らが暗殺を主導したことが地元警察の調べで明らかになった。全容はまだ解明出来ていないが、常識的に考えれば、正男氏の異母弟、金正恩氏が指示したことはほぼ断定できる。古今東西繰り返されてきた独裁者一家の骨肉の争いが再現された形だが、メンツをつぶされた中国の反応が注目された。 事件直後、中国が北朝鮮...
単純な計算式で応用問題は解けぬ―西岡氏への再反論 富坂聰(拓殖大学教授)
もはや論点が少なくなってしまったので、再反論の必要はないかとも思いましたが、事務局から促されたので最後の反論をしようと思います。 要するに、歴史問題をめぐって私の見解が「宮家邦彦氏と同じ」だと言いたいということなのでしょう。宮家さんも、私にある種のレッテルを貼るためだけに利用されて気の毒だと思います。また宮家さんが『WEDGE』(2015年6月号)に寄稿された文章も、1億3000万人の民を抱...