6日朝、北朝鮮は再び複数の弾道ミサイルを発射して、日本の排他的経済水域のほぼ同じ海域に同時弾着させた。7日の声明で北朝鮮は、「在日米軍基地を標的とした」と述べた。1日から始まった米韓合同軍事演習に対する反発であろうが、軍事的には飽和攻撃能力を高めることに他ならない。飽和攻撃とは、相手の迎撃能力を上回る攻撃を行うことだ。
北による地上からの弾道ミサイル同時発射は、昨年8月3日の2発と、9月5日に西岸から日本の排他的経済水域に3発の弾道ミサイルを発射させたのに続き、今回が3回目で4発発射した模様である。また北朝鮮の労働新聞が公表した画像によれば、発射された弾道ミサイルは、昨年9月同様ノドンあるいは改良型スカッドである。今回も、昨年9月同様、探知が困難な移動式ランチャー(発射台)が使用されたものと思われる。
同様に中国も昨年11月28日、日本を射程に収める弾道ミサイルDF-21を7発以上同時発射させている。
●日米の対処能力突破に狙い
中朝両国の意図は、日米の弾道ミサイル防衛を突破する為であることは明らかである。イージス艦の弾道ミサイル防衛能力は、相手が飽和的に弾道ミサイルを発射した場合、最初の数発には有効に対処できても、その後の対処能力には限りがある。これは将来、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を地上に配備したとしても、多少の対処能力向上は見込まれるものの限界がある点では同じだ。
こうした弾道ミサイル発射に対して、政府は毎回、「情報収集に万全を期す」と言っているが、情報収集は、その後の政策決定に繋がらなければ意味がない。中国や北朝鮮に対してはいっさいの「幻想」を捨てるべきあろう。政府は「外交ルートを通じて厳重な抗議を行った」とミサイル発射や核実験の度に声明を出しているが、その効果が全くないことは明らかである。米国もブッシュ息子政権の2008年10月にテロ支援国家への指定を解除してしまったが、今回マレーシアでの金正男暗殺事件で、それが北朝鮮に対する「幻想」に過ぎなかったことが証明された。
●発射源攻撃以外に手立てなし
弾道ミサイル飽和攻撃に対しては、レールガンやレーザー兵器等エネルギー兵器の開発と発射源攻撃能力を保持する他に有効な手立てはない。それには戦力の不保持を定めた憲法改正が不可欠だ。エネルギー兵器の開発は勿論のこと、発射源攻撃能力を構築するには、それを可能にするようなインテリジェンス入手能力構築を始めとして少なくとも5年はかかる。憲法改正は焦眉の急だ。全て今すぐ手をつける時期に来ている。