公益財団法人 国家基本問題研究所
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国基研ろんだん

2017.03.27 (月) 印刷する

NHKは政治的に中立だと言えるのか? 太田文雄(元防衛庁情報本部長)

 筆者は海外のニュースに興味があり、毎朝7時からNHKのBS海外ニュースを見ている。毎週土曜日は「ニューヨークから」と題して京都生まれの米国人タレント、マイケル・マカティア氏の現地報道があるが、大統領選挙前後から一貫してトランプ大統領の批判報道ばかりを流し続けている。内容も一方的で、NHKの「政治的中立」はどこへ行ったのかと首を傾げざるを得ない。
 もともとニューヨーク州はリベラルな土地柄で、民主党支持の傾向が強い。同州では今回もヒラリー・クリントン候補が勝利を手にした。マカティア氏には個人的な心情もあるのだろうか、輪をかけるようにしてトランプ批判を繰り返している。インタビューに応じるニューヨーク市民もトランプ批判者を意図的に選んでいる印象が強い。

 ●放送倫理綱領にも違反
 しかし、アメリカ大陸は広い。この3月、国家基本問題研究所で講演したバンダービルド大学のジェームス・アワー教授はトランプ大統領について、「自宅のあるテネシー州でも約6割の支持があり、決してクレイジーではないと評価されている」と述べている。
筆者も、安全保障政策に関してトランプ政権は、オバマ前政権と比較してよっぽどマシだと考えている。それはさておいても、自国民が民主的な選挙によって選出した大統領を常にこき下ろす態度は「米国民はバカだ」と言っているに等しく、聞き辛い。
 ある局面だけを捉えてトランプ政権批判ばかりを伝える態度は、NHKが日本民間放送連盟と定めた「放送倫理基本綱領」に明らかに反している。綱領には「意見の分かれている問題については、できる限り多くの角度から論点を明らかにし、公正を保持しなければならない」とある。
 そもそも政治問題で、ニューヨークからだけインタビューを流し続けることは、アメリカ全体が反トランプであるかのような印象を与えかねない。偏見に満ちているとしか思えない番組作りが今後も続くのであれば、筆者は受信料の支払いを拒否しようとすら思っている。