中国共産党による、ウイグル人学者イルハム・トフティ(Ilham Tohti)氏の不当拘禁(「国家分裂罪」で無期懲役と全財産没収)は典型的な権力犯罪である。いまだ獄中にある民主活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波(Liu Xiaobo)の場合と同断である。
北京から的確な報道を続ける産経新聞の矢板明夫記者によると、中国当局はイリハム氏に対し、「ウイグル族に不満を持つ6人の漢族の刑事犯と同じ房に入れ、イスラム教徒が口にできない豚肉の料理を出すなど、さまざまな嫌がらせ」を加え、一方イリハム氏は判決後に弁護士を通じ、「私は勇気を持って戦い続ける。もし将来、私が自殺したというニュースが流れたなら、それは嘘です」との切なる声明を発表している(産経2014年10月6日)。
この「判決」が出て4日後の9月27日、中国の王毅外相は国連総会での演説で、「歴史は作り替えられないし、真実も歪曲できない」と暗に安倍政権を非難、中国が勝利した「反ファシズム戦争」(第二次世界大戦)の結果、「何が善で何が悪か」の審判も出ていると主張した。その上で国際社会に対し、「正義や良心を一緒に擁護しよう。そうすれば、侵略を否定し歴史を歪めようとする者は隠れることができないし、何かを成し遂げることも不可能となる」と呼びかけている。
中国共産党が何をしてきたか、何をしているか、その行状に鑑みれば、まさに厚顔無恥、噴飯ものの内容である。ところが、日本の政治家からは、「中国のいま」を取り上げての反論の声は、今回もほとんど聞こえなかった。
来年は、第二次大戦後70年、「対華21箇条要求」100周年等に当たり、中共が歴史カードを用いた対日攻勢を一段と強めてくることは間違いない。
日本側は、歴史の偽造に事実を以て反論すると共に、上記王毅外相の演説のたぐいに対しては、中国の現在進行形の人権蹂躙を明確に指摘することで反攻に出ねばならない。最も強力なカードの一つを、相手の「反発」を怖れて、いつまでも使えないようでは、国際情報戦に勝てるはずもなかろう。