国連安全保障理事会は12月23日、北朝鮮に対する新たな制裁決議(第2397号)を全会一致で採択した。11月29日に発射された大陸間弾道ミサイル「火星15」に対するもので、8月と9月に続く今年3度目の制裁となる。
北朝鮮の貿易額の9割を占める中国が、決議を忠実に履行するなら、来年、金正恩政権は相当な打撃を受けるはずだ。具体的には、2016年度との比較で、北朝鮮は輸出で得られる外貨の9割に当たる25億ドルを失い、ガソリンなど石油精製品の9割が入ってこなくなる。また、海外派遣労働者の賃金から得ていた年間10億ドルの外貨も2年後には失うこととなった。
●中国に「除外品目」認めるな
具体的な数字を見ておこう。これまでの2度の制裁で、すでに北朝鮮の輸出は大幅に制限されていた。貿易振興のための韓国政府機関KOTRA(大韓貿易投資振興公社)によると2016年の北朝鮮の輸出額は28.2億ドルだった。
そのうち、すでに84.4%、約23.8億ドルが制裁の対象となっていた。石炭など鉱物燃料が11.9億ドル、衣類7.5億ドル、鉄鉱石・亜鉛2.3億ドル、海産物2億ドルなどだ。これに今回、農産物、機械類・電気機器、土石類、木材、船舶が制裁対象として加わった。
2016年の輸出額は、農産物7181万ドル、機械類・電気機器7259万ドル、土石類75万ドル、木材1921万ドル、船舶222万ドルで、合計1.6億ドル5.6%となり、前回までの制裁と合わせると25.4億ドル、90%となる。ちなみに、制裁対象になっていない10%、2.8億ドルの中には、北朝鮮の輸出額第5位の鉄鋼・金属製品(1億4355万ドル)、同7位の化学工業製品(3395万ドル)、同10位のプラスチック・ゴム(1377万ドル)などがある。
中国が自国経済の必要から、これらを制裁品目から除外させた可能性が高いが、次に北朝鮮が軍事挑発をした際には、これらもすべて制裁品目に入れるべきだ。
●漁業権売買も制裁対象に明記
また、今回の制裁で8月の制裁決議(第2371号)における北朝鮮からの海産物の輸入禁止には、「北朝鮮による漁業権の販売等の禁止を含むことを確認する」と明記された意味も大きい。
最近、多数の北朝鮮漁船が日本に漂着しているが、その背景に北朝鮮が自国近海の漁業権を中国に売って外貨を得ていることがあると、専門家は指摘してきた。韓国政府によると、2016年に北朝鮮は中国に黄海側漁業権を3000万ドル、日本海側漁業権を4500万ドル、合計7500万ドルで売却した(朝鮮日報2016年8月12日付)。
中国は安保理制裁で北朝鮮から海産物が買えなくなったので、代わりに漁業権を買うという形で、実質的な制裁破りをしていたのだが、それが今回、制裁違反だと明記されたことの意味も大きい。
また、すでにマスコミが報じているように、米国が全面禁輸を求めていた石油については、ガソリンなど石油精製品は年間50万バレルに上限を設定し、原油の年間上限は400万バレルもしくは52万5千トンと具体的に数値化した。米国は北朝鮮への石油精製品の輸出量を年間450万バレル、原油の輸出量を年間400万バレルと試算しているので、前者は9月の制裁前と比較して9割がカットされたことになる。原油についても新たに北朝鮮が決議違反の核実験やミサイル発射を行った場合は、供給を減らすことが明記された。
今、北朝鮮ではガソリンやディーゼル燃料など石油精製品が品薄となり急騰している。海外にいる貿易担当者らには、なんとしても石油精製品を買いつけろという厳命が下っているという。