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2011.09.07 (水) 印刷する

「原発=核抑止」の認識は疑問 会員 オフィス エム・ソリューション代表 前嶋規雄

 東日本大震災から半年たって、フクシマが「人災」だったことや、「原発は不可欠でもなさそう」なことが判ってきた。しかし、尊敬する国基研理事の石原慎太郎東京都知事は「フランスはきちんと管理できている。日本でもできるはず」と言う。私達の櫻井よしこ理事長も、原発事故に適切な対応をしなかった政府の「姿勢」の問題と講演会で主張された。いずれの議論も、日本には原発を使う必要な技術があるという前提に立っておられるのであろう。
 だが、日本の原発技術のレベルは「本質的に安全」どころか、廃棄物を処理する一貫システムすらいまだにできていないし、今後10年たってもできないと思われる。
表向きは技術力の問題に見えるが、「建屋内の水素爆発を予測できた者は誰もいなかった」という東電の発表をNHKは8月17日に伝えた。その病根は深い。限られた人々のレベルでなく、日本には国家として安全を担保する力がないと思うべきだ。石原氏の指摘のごとく、日本人が堕落していれば、原発の安心は担保できない。経験知は「技術力は人間力の累積」と教えている。
 再生可能エネルギーに関しては、本格的な投資もせずに不経済なエネルギーと一方的に決め付けるのは、国の不作為の結果そうなったことを見抜いていない。
 日本の防衛の在り方として「ハリネズミ国家」が選択肢の一つなら、原発技術保有は抑止力になるという理事長の指摘には疑問がある。攻撃される原発が日本になければ、防衛上の弱点は減る。抑止・報復手段として有効なのは、原発技術でなく衛星技術と長距離精密制御技術である。