公益財団法人 国家基本問題研究所
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原発をどうする

2011.09.13 (火) 印刷する

貧しく生きる覚悟は脱原発派にあるのか 学生 伊藤夏樹

 「脱原発」論義が日本中で盛り上がりを見せている。菅直人前首相は7月、唐突に脱原発を宣言した。辞任した鉢呂吉雄経産相は「基本的に原発はゼロにする」と発言した。マスコミも、被災地の復興より脱原発や代替エネルギーの議論で忙しいようだ。しかし原発を本当に廃止して良いのだろうか。
 福島第一原発の事故は、最初から最後まで作業員の人為的ミスの連続で引き起こされたスリーマイル島やチェルノブイリの事故と根本的に異なる。千年に一度の地震と津波により結果的に生じた天災である。東京電力の情報公開や日頃からの運営に全く問題が無かったとは言わない。しかし、あれほどの津波を受けても原発は正確に緊急停止し、メルトダウンが生じた際の放射能被害の地理的範囲は原発からおおむね20~30km圏内に留まり、首都圏は無害だった。東京の放射能の濃度は、チェルノブイリ事故の際のモスクワより低かったのだ。
 今回の事故で、むしろ日本の原発の安全性は証明された。だからこそ原発事故の直後にもかかわらず、トルコ政府は日本の原発を早くトルコに売却するように期限まで設けて日本政府に求めてきたのだ。原発廃止論者はこのことの意味を分かっていない。
千年に一度の地震のためだけに原発を廃止し、残り999年間を親子40代にわたって貧しく生きる覚悟はできているのか。安価な電力が不足し、製造業の国際的な競争力が低下し、失業者が倍増しようとも、原発に反対し続けるのか。一時の感情で原発を廃止すれば、失業や貧困という負担を子孫に押し付けることになる。