米ヴァンダービルト大名誉教授で、日米研究協力センターのジェームズ・アワー所長は6月5日、国家基本問題研究所で、日、米、中の3か国を中心とする安全保障問題について語り、研究所の企画委員と意見交換した。アワー氏は、国基研の客員研究員でもあり、訪日の機会を利用しては意見交換を行っている。
最近の南シナ海情勢が意見交換の主要テーマで、アワー氏は、人工島を埋めたて、拡大する中国の行動は国際法や基準に照らし合わせ、合法性を失っており、周辺諸国の警戒心を煽っていると指摘、「今や、中国には友人はいない」と語った。最近日系人として初めて米太平洋軍司令官に就任したハリー・ハリス海軍大将は、人工島の12カイリ(通常なら領海)であっても(合法性がないので)米艦艇を進入させると明言している。また、アシュトン・カーター国防長官も、先日シンガポールで開かれた安全保障国際会議(シャングリラ会議)で中国を名指しで非難、強い態度で臨むと強調した。
実際にホワイトハウスがゴ―発信を出すかどうかは明言できないが、とアワー氏は断りながらも、「戦う姿勢を示すことで戦いの可能性は少なくなる」「何もしないと戦争の可能性が高まる」ときっぱり述べた。日本の野党や、朝日新聞など左翼、リベラル勢力は安保関連法案との関連で、中国を刺激して「戦争に近づく」と批判するが、むしろ逆に戦争の可能性を高めているのが実情である。
アワー氏はまた、国会審議で、安倍首相が新たな法案が可決しても、米軍など友軍の後方支援を必ず行うわけではなく、バックアップしないこともあると述べたことについて、「当然のことだ。効果があるのは、日本が後方支援してくるかもしれない、との疑いを中国側に抱かせることだ。これが抑止力というものだ」と語った。
アワー氏は、慰安婦問題に関してアメリカの歴史学者が連盟で日本側の反論を批判していることに言及、保守的な動きに対抗するリベラルな大学や学者の傾向であり、ある種の「アメリカの建前(political correctness)」である、と述べた。建前と本音は日本だけのことではない、としてうえで、アワー氏は自らの大学で、ある黒人、女性教授が保守的な言動をとっているが、多数派の白人教授会は何もできないでいる、ことを明らかにした。何故なら、黒人で、女性を非難すると、逆差別として糾弾されかねないことを知っているからだ、と語った。(文責・国基研)