楊海英・静岡大学教授は、4月8日、国家基本問題研究所において、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員に対し「中国の民族問題」について述べ、その後意見交換した。
楊海英教授は、南モンゴル(内モンゴル自治区)のオルドス高原出身、モンゴル名オーノス・チョクトで日本語名が大野旭、北京第2外国語学院卒業、1989年来日。総合研究大学院大学博士課程修了。現在、静岡大学人文社会科学部教授。
教授は、モンゴルとウイグルから見た中国の民族問題の歴史的経緯及び現状についてスライド資料を使用して述べた。まずモンゴルにおいて、1967年から1976年までに南モンゴルで漢民族によるジェノサイドが発生した事実(中国公式約3万人殺害、研究では10万人殺害)はモンゴル人の「民族の集団的な記憶」として焼きついているとのこと。また米英ソによる第2次大戦後の国際秩序を規定した「ヤルタ協定」の再評価をしないかぎり、この問題は今後も継続するという。
次に、教授は中国によるモンゴルとウイグルへの対応に共通点があることを指摘した。モンゴルの場合、日本による近代化を導入して民族自決の道を進むということに対し中国が虐殺という形で応じている。一方、ウイグルにおいては、トルコ・イスラームからの近代化の波に対し、1958年中国が知識人を大量に粛清するという形で対応しており、中国による民族自決の否定という点や時期的な点で一致するとのこと。
最後に、文化大革命のうねりの中で、モンゴル民族の自決を徹底的に淘汰するということが行われた事実に目を瞑る、日本の多くの中国研究者の偏った視点にも警鐘を鳴らした。さらに、日本は旧植民地などかつて影響力を行使した地域に対してもっと責任をもって建設的な関与をすべきということにも触れた。
(文責 国基研)