大和総研執行役員・チーフエコノミストの熊谷亮丸氏は6月24日、国家基本問題研究所企画委員会で、ゲスト・スピーカーとして英国による欧州連合(EU)を離脱することを問う国民投票の問題(BREXIT)が日本経済・アベノミクスにいかなる影響を及ぼすかについて語った。この中で熊谷氏は、離脱・残留いずれにしても日本のGDP下落は避けられないとして次のように述べた。
英国の現在(日本時間の24日正午)の状況は、EU離脱を問う国民投票の集計終盤に当たり、間もなく大勢が判明するが、BREXIT(英国のEU離脱)の日本への影響について、それが離脱の場合であれば英国の孤立化が進む結果、欧州経済への打撃は避けられず、当然、金融や自動車などでは悪影響があると思う。また残留となった場合でも、英国内の離脱世論が消滅するものでなく、米欧にくすぶる自国ファーストの傾向が保護主義を呼び、その結果として経済の停滞が予想されるとのこと。
BEXITのリスクの一つ、金融の関係では、英国に拠点を置く銀行が「パスポート」を失うことになる。これはEU域内における金融業務が域内で自由に行える「EUパスポート制度」上の権利であり、これを失うことにより英国内の金融機関が大陸側にあるEUに移動してしまうというリスクを負うとする。また、英国内に拠点を持つ日本企業も、英国との関係を見直さざるを得ず、今後英国内を脱出してEUへ移動する動きが出る可能性がある。
日本経済・アベノミクスにとって、BREXITのリスクに対処するための自助努力には何があるかとの問いに対し、熊谷氏は、社会保障制度や労働市場の改革を挙げた。とくに労働市場については、日本ではサービスへの対価が絶対的に少ないことが生産性を妨げており、サービス業の生産性を上げることによる経済効果が少なくないと指摘した。具体的には例えばサービス業に多い非正規労働者の賃金を、正規労働者の水準近くまで引き上げることが必要と強調した。
(文責 国基研)