米ワシントンにあるAEI(アメリカ公共政策研究所)客員研究員の加瀬みき氏は21日、国家基本問題研究所で、「トランプ政権と米政治」について報告、櫻井よしこ理事長ら企画委員と意見交換を行った。
加瀬氏は、トランプ大統領が最近米輸出入銀行やイェレンFRB議長に対する評価の急変をはじめ、メキシコとの国境に設ける壁設置費用負担や海外非介入政策、北大西洋条約機構(NATO)評価、中国の為替操作国指定など短期間に相次いで過去の発言を大きく覆したことを紹介した。
背景として、オバマケア代替法の法制化失敗などで政治の現実を思い知らされた、スティーブン・バノン首席戦略官が力を失う一方でより穏健な大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー氏、そして外交・安全保障問題では国務、国防、そして国土安全保障長官の“Axis of Adults” (大人の枢軸)、および国家安全保障担当補佐官等が協力体制を敷き、影響力を発揮するようになったことを挙げた。
特に北朝鮮対応を含め対中政策については、クシュナー氏がキッシンジャー元国務長官の助言を得て、包括的な政策につなげているようにすら見える。しかし、加瀬氏は、大統領は短期的な取引には長けているが、政治的哲学や歴史観、戦略観がないこと、それゆえに政権としての長期的な政策は見えにくく、先行きの不透明さや不安定さがあると指摘した。
(文責 国基研)