4月26日、国基研企画委員会は、ゲストスピーカーとして、神道学者で國學院大學教授の茂木貞純氏を招き、天皇・祭祀・神社についての勉強会を開催し、意見交換した。
茂木教授はまず、日本列島の特色と独自文化の発展について、1万5千年前に縄文文化が栄えてから独自の文化を継承・発展させてきたことを強調した。それと同時に、日本固有の神話が形成されて、国の誕生から皇祖皇宗の系譜に従い、宮中祭祀を概観した。
古事記や日本書紀の記述をもとに、国生み神話、天岩戸神話が始まり、神武天皇東征伝承に至り、奈良の橿原の地で、初代天皇として神武天皇が即位することにより、万世一系が確立する。その過程において、天照大神から三大神勅が下され、宮中祭祀、三種神器、稲作などの国の基本が定まったという。
歴代天皇は、宮中祭祀を重要視してこられた。例えば、第36代孝徳天皇の御代で天皇治政の方針は「先ず以て神祇を祭鎮めて、然して後に政事を議るべし」と、また第84代順徳天皇が著した『禁秘抄』にも「凡そ禁中の作法、先ず神事、後に他事」とあるように、神事優先の方針が散見される。
宮中祭祀のうち、皇位継承の際に行われるのが皇位継承儀礼で、剣璽等承継の儀、即位礼正殿の儀、即位大嘗祭がある。そのうち、大嘗祭は、古くから宮中で行われてきた新嘗祭を、7~8世紀頃に天皇の即位儀礼として今日まで継承されてきた。このことは、天皇と祭祀が密接不可分であることを示しているという。
第10代崇神天皇の御代、流行した疫病を祭祀で静謐を回復させ、これを機に宮中に祭られてきた御鏡が宮中の外に祭られ、伊勢神宮の鎮座につながる。以降、各地に天社・国社を定めて祭祀を行うようになる。第42代文武天皇の時代に大宝律令が制定され、天皇と国家が行う祭祀等が神祇令にまとめられる。江戸幕府は神社条目を定め、神職に神祇道をよく守り、古来からの祭祀を怠慢することなく行うよう命じている。明治政府は皇室祭祀令を制定し、伝統に基づく宮中祭祀を整備した。
先の大戦で敗戦し、神社は軍国主義の温床とみなされた。占領軍から神道指令が出され、神道は国家から分離した。日本国憲法の制定により、皇室祭祀令は廃止されたが、大御心により従来通り宮中祭祀は継続されているとした。
茂木教授は昭和26年、埼玉県生まれ。國學院大學大学院博士課程(神道学専攻)を修了後、神社本庁に入り、教学研究部長、総務部長などを歴任する。現在、國學院大學神道文化学部教授、熊谷市古宮神社宮司を勤める。著書に『遷宮をめぐる歴史』(共著・神道文化会)、『神道と祭りの伝統』(神社新報社)、『日本語と神道』(講談社)などがある。
(文責国基研)