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2019.06.28 (金) 印刷する

「世界を揺るがす通商問題」 山下一仁・キャノングローバル戦略研究所 研究主幹

 通商問題や農業問題の第一人者、山下一仁氏は、6月28日、定例の企画委員会にゲスト・スピーカーとして来所した。
 山下氏は、世界を揺るがす通商問題と題して、ブレグジット、米中貿易戦争、日米交渉、農業問題など幅広く語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。
 まずブレグジットの問題について。EUはそもそも関税同盟や単一市場により、域内の税関検問所を不要としてきたが、英国が完全に離脱すると、アイルランドの問題が発生する。すなわち、厳格な国境管理が必要になることから、北アイルランドとの自由な往来ができなくなり、紛争の再発が避けられない。メイ首相によるEUとの妥協案は、完全に留まるアイルランドに対し、英国本土はEUと同一の規則等は適用されない条件付きという中途半端なものになった。その結果、10月31日まで期限が延長されたが、混乱する英国議会とともに先行きは不透明だという。
 次に、米中貿易戦争について。本質は米中間の負の連鎖(互いに関税を引き上げる)だが、その反面、2国以外の国は漁夫の利を得るという。例えば、大豆では、ブラジルが、牛肉なら豪州が、そして自動車では日本が、対中輸出で潤うとのこと。また、サプライチェーン(工業製品の部品供給網)が、米中を回避しながら発展するため、世界経済にはあまり影響を及ぼさないとも。
 他方、米国国内に目を転じると、来年の大統領選挙がトランプ政権の目下の関心事で、前回の選挙と昨年の中間選挙の結果を分析すると、勝敗ラインを決めるのは、ラストベルト(五大湖南東部の脱工業地域)、コーンベルト(五大湖南西部の集中農業地域)、スイングステート(激戦州)になる。いずれにしても、農業票が鍵を握ると見られ、選挙までの対外政策では、農産物関税交渉がさらに重みを増すことになるという。
 最後に農業問題について。米国の農産物は、輸出も輸入も世界一であり、他の国も多かれ少なかれ双方向であるが、日本の農業は輸入ばかりで、輸出がほぼないに等しいという歪んだ実態がある。そこで、我が国には他国より価値の高いコメがあるので、速やかに減反を止め、余剰米を輸出に回すことにより、日本の農業競争力は強化できると指摘した。
 山下氏は1955年、岡山県笠岡市生まれ。77年、東京大学法学部卒業後、農林省入省。82年、ミシガン大学にて行政学修士及び応用経済学修士、20005年、東京大学農学博士。農水省ガット室長、欧州共同体日本政府代表部参事官、食糧庁総務課長、農水省農村振興局次長などを歴任。08年、農水省退官、経済産業研究所上席研究員、10年から現職。剣道4段。
 著書に『農協の陰謀―「TPP反対」に隠された巨大組織の思惑』『環境と貿易』『農業ビッグバンの経済学』『日本の農業を破壊したのは誰か』『TPPが日本農業を強くする』『いま蘇る柳田國男の農政改革』など多数。(文責 国基研)

19.06.28