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2019.10.04 (金) 印刷する

「日米貿易合意と農業」 山下一仁・キャノングローバル戦略研究所 研究主幹

 通商問題や農業問題の第一人者、山下一仁氏は、10月4日、定例の企画委員会にゲスト・スピーカーとして来所した。山下氏は、日米貿易合意と農業の問題について語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。
 まず、今回の日米貿易協議の底流には、TPPの問題が絡んでいるという。
 二国間の自由貿易協定を求める米国がTPPから脱退した当時、アメリカ抜きのTPPは意味がないという議論が日本国内で大勢を占めていた。それに対し、米国抜きのTPP11を先行させ、米国産の農産物だけを日本市場で不利に扱うことによって、日米FTA交渉での有利なカードを持つことができる。氏が以前に指摘した通りの展開となった。
 例えば日本が輸入する牛肉関税の水準を比較すると、米国が38.5%に対し、豪州・カナダは26.6%と、10%以上の開きが生じる。これが継続すると将来的には、さらにその差が広がっていくことになる。
 加えて、大統領選挙を控えるトランプ氏にとって、中西部ラストベルト(五大湖南東部の脱工業地域)・コーンベルト(五大湖南西部の集中農業地域)での支持獲得は、大変気になるところであった。しかし、現実は米中貿易対立の影響で中国が大豆関税を引き上げ、米国の輸出が減少、価格も下落、大豆農家が甚大な被害を被ってしまった。そこで、農業票を獲得する上で、日本との関税を撤廃・削減することには、大きな意味があった。
 上記のような事情もあって、今回の日米貿易交渉の早期妥結が促されたという。日本からすると、農林水産品・牛肉などの関税は、結局TPPの範囲内に収めたうえ、コメ関係はすべて除外されたことにより、一定の評価を与えることができる。ただし、自動車・同部品については、2.5%の関税撤廃期間などの具体的規定がなく、25年と規定されたTPPと比べると、後退したとも言えよう。
 いずれにしても、今回の日米貿易交渉の妥結により、いまTPPに関心を示す中国とは反対に、米国が再びTPPに戻ってくることはないという。 (文責 国基研)

19.10.041