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2019.12.06 (金) 印刷する

「中国経済の行方 ~ 米中摩擦は長期化、来年は(どう)頑張るのか」 齋藤尚登・大和総研主席研究員

中国経済を専門とする大和総研主席研究員の齋藤尚登氏は、12月6日、国家基本問題研究所の定例企画委員会でゲストスピーカーとして、中国経済の行方について語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見を交換した。

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まず、中国にとって2019年という年の意義を考えるとき、意外な重みを感じるという。つまり、1919年の五四運動(北京市で起きた反日・反帝国主義運動)から100年、1949年10月1日の中華人民共和国建国から70年、そして1989年6月4日の天安門事件から30年という、大きな節目の年にあたる。当然、国内は官製祝賀ムードが漂うが、現地にいると、過剰なまでの情報統制がなされ、テレビの画面は度々マスキングがかかったという。

祝賀ムードとは裏腹に、米中摩擦の深刻化・長期化に加え、香港問題が中国へのボディーブローとなっている。特に、民主的選挙の実現などという抗議デモの要求には、共産党は絶対に折れない。他方、米国トランプ大統領は「香港人権・民主主義法」に署名するなど、国際圧力を高めようとしており、対立が先鋭化している。

さて、4中全会(10月28日~31日)では「党中央の決定」が採択され、今後の中国経済を見る上で参考となる。全部で15項目あるのだが、経済に関しては6番目の1項目のみであった。その他は、共産党の堅持に関するもので、いかに経済に関心が薄れているかが窺える。

その中で特筆すべきは、あらゆる分野に対する党による統治の強化だ。「党政軍民学、東西南北中において、党が全てを指導することを必ず堅持する」との決定は、軍民学に共産党を浸透させることを公言している。外資を含む民営企業が、党の指導を受け入れることは、民営企業のソフトな国有化を意味する。今後、民営企業の活発な企業活動インセンティブが削がれることが懸念される。

最後に、米中貿易摩擦問題の見通しについてだが、本質の問題は貿易不均衡の是正にもあるが、実はハイテク・軍事覇権争いが根底にあるとのこと。つまり、経済の問題と安全保障や人権の問題がからみ、価値観の対立が表面化することから、長期の争いになると予測した。

齋藤氏は、1990年山一證券経済研究所に入社、香港駐在を経て1998年大和総研に加わり、2003年から7年間、北京駐在、2015年に主席研究員、経済調査部担当部長。(文責 国基研)