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2020.06.05 (金) 印刷する

「コロナ恐慌と財政を考える」 田村秀男・産経新聞特別記者

田村秀男・産経新聞特別記者は6月5日、国家基本問題研究所企画委員会に来所し、『コロナ恐慌と財政を考える』と題して語り、櫻井よしこ国基研理事長をはじめ企画委員らと、意見を交換した。

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「人が動かない、金も動かない」、コロナ禍による経済的打撃が世界経済に及ぼした影響は甚大で、今回の事態はコロナ恐慌と呼べる。そして、その対応として各国政府は、大型の緊急経済対策を打ち出している。

そのような中、政府の借金が増え続ける我が国で、この政策をどうとらえ、V字回復へつなげていけるのか。そこで重要なキーワードは「デフレ」である。

国債発行額は、この10年、30兆から40兆円で推移してきたが、コロナ禍の影響で、今年はすでに90兆を超えて、約3倍に急増しているが、いまだ金利が上がらない。債務は増えても金利が上がらないという一般常識には反する事態。これは、長期のデフレによるところが大きく、コロナショックでさらにデフレ圧力が高まる可能性さえある。

期待される対策は、大型の財政出動により経済を活性化することであり、緊縮財政などではない。批判する中には、ハイパーインフレーションへの不安を煽る向きもあるが、第1次世界大戦後のドイツのような、生産拠点の荒廃にもかかわらず紙幣を乱発したのとは、事情が全く違うことも指摘しておきたい。

コロナ禍の教訓の一つは、サプライチェイン一極依存への警鐘である。政府も経済界も、中国詣ではやめて、生産拠点の再編に取り組むべき。特に、デジタルを中心としたハイテク産業の拠点を、国内や米国などに移すことも必要ではないか。

【略歴】
昭和21(1946)年、高知県生まれ。1970年、早稲田大学政治経済学部卒、日本経済新聞社に入社。ワシントン支局長、米アジア財団上級フェロー、香港支局長、編集委員を経て、2006年より現職。その他、早稲田大学大学院経済学研究科講師、早稲田大学中野エクステンション・スクール講師を兼務する。

主な著書に、『中国経済はどこまで死んだか 中国バブル崩壊後の真実』(共著、産経新聞出版)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『円の未来』(光文社)、『人民元が基軸通貨になる日』(PHP研究所)など。(文責 国基研)