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2020.06.19 (金) 印刷する

「コロナウイルス後の日本経済」 松元崇・国家公務員共済組合連合会理事長

松元崇・国家公務員共済組合連合会理事長は6月19日(金)、国家基本問題研究所企画委員会において、「コロナウイルス後の日本経済」と題し、今後の日本経済に関する考えを述べ、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。

20.06.19

現在の日本経済の構造は、日本人が能力を発揮できない仕組みで、生産性が低いまま、労働者の所得も上がらないという悪循環を招いていると指摘。コロナ禍により、全世界で経済が下振れしているが、最近のIMF世界経済見通し(2020.4.14)によると、来年には回復傾向にある中で、日本は低迷が予想されるという。

その理由の一つは、わが国の企業体質が変化を拒んできたことにある。コロナ前からすでに世界中の企業は、選択と集中(コア事業の見極めと経営資源の集中)が進み、生産構造を劇的に変化させてきた。しかし、わが国はIT化や選択と集中に出遅れたばかりか、いまだに終身雇用制という、個人の転職が不利に働く企業風土を変えられず、労働市場が硬直化して生産性の低い状態が続く。結果として、企業の成長が停滞し、経済も低迷することなる。

逆に例えば、スウェーデンのように、個人のキャリアアップを支える流動的な労働市場があれば、生産性は上がり企業も成長できるはずだ。

他方、わが国では少子高齢化が進む中、経済成長が望めないのは致し方がないという意見もあるが、果たしてそうなのか。日本の労働生産性は他の先進諸国よりも低く、米国の概ね半分以下だが、裏を返せば、生産性さえ上がれば高成長の可能性が期待できる。

個人の生産性を上げるには、若者の働き方を支える視点が必要になる。つまり、生産年齢にある若者が、安心してキャリアアップできるような社会保障制度の充実が望まれるということ。具体的には例えば、若者が転職する際、学校などで新たな技術を学び直す機会を提供する、あるいは労働市場の規制改革で付加価値を付けた若者を積極的に採用する。そのための投資が必ず必要になることは言うまでもない。

英国のジャーナリストであるビル・エモット氏は著書『「西洋」の終わり』で、かつて大きな政府であったスウェーデンは、選択と集中により高い経済成長率を持続し、政府規模を小さくできたと指摘する。わが国も同様なことは実現可能で、そのための一時の痛みは享受しなければならない。

【略歴】
松元氏は1952年、東京生まれ。76年東大法学部卒業後大蔵省に入省、80年米スタンフォード大でMBA取得、その後主計局を中心に勤務し2004年財務省主計局次長、12年内閣府事務次官を経て14年退官。現在、国家公務員共済組合連合会(KKR)理事長。

著書に『「持たざる国」からの脱却-日本経済は再生しうるか-』(中公文庫、2016年)『日本経済 低成長からの脱却 縮み続けた平成を超えて』(NTT出版、2019年)など多数。(文責 国基研)