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2020.11.06 (金) 印刷する

「台湾から見た5中総会後の中国政治」 矢板明夫・産経新聞台北支局長

 矢板明夫・産経新聞台北支局長は、11月6日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、先月末に閉幕した中国共産党5中総会を受けて中国政治を概観し、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。今回は、台湾からオンラインでの参加である。

米大統領選挙を台湾も大変注目する。これまでトランプ政権の台湾政策によって国際社会の台湾への関心が高まってきたが、仮にバイデン政権が誕生すると、どうなるのか。台湾紙「自由時報」が社説で説いたのは、もしトランプなら台湾に新しい責任が生まれ、バイデンなら新しい挑戦に直面する、と懸念する声だ。

他方、中国にとってバイデン氏は付き合いやすい相手であるから、トランプ政権で傷ついた関係を修復すると見込まれる。よって、短期的には台湾海峡に波風を立てないのではないかと見ることもできる。だが、長期的には台湾統一を目指すだろう。

中国共産党は10月26日から29日の間、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)を開いた。2035年までに一人当たりの国内総生産を中等先進国の水準まで引き上げるとする方針を決めた。これが実現すると、現在米国に次ぐGDPが米国を超えることになり、当然、軍事力も巨大となる。

また、国防法を改正して軍の影響力を拡大した。習主席が「われわれは国家主権や発展の利益が損なわれるのを決して座視しない」と語ったように、改正案では「発展の利益」保護が明記され、軍の活動範囲が広がることを示した。

一方、大陸内では権力闘争が静かに進行している。例えば、習近平のかつての盟友で、太子党の王岐山一派とされる任志強が、習近平のコロナ対策を批判したところ、汚職などの罪で懲役18年の実刑となった。これは、習近平批判に対する見せしめとの見方が強い。

逆に、李克強国務院総理は習近平の経済政策に批判的であるし、中央党校の元教授で在米の蔡霞は習近平を「マフィアのボス」と公然と非難している。まさに、習近平の足元が揺らいでいるようにも見える。

今後、中国国内が不安定化するかもしれない。同時に、仮に米国にバイデン政権誕生なら、朝鮮半島に対する米国の圧力が緩む可能性があり、北朝鮮の動きが活発になるのではないか。日本の周辺状況から目が離せない。

【略歴】
1972年中国天津市生まれ。残留孤児2世として1988年15歳のときに帰国、1997年慶應義塾大学文学部卒、松下政経塾、中国社会科学院大学院を経て2002年産経新聞入社。2007年4月から2016年11月まで中国総局記者として中国に駐在したのち外信部次長、2020年4月から台北支局長。主な著書に『中国人民解放軍2050年の野望』(ワニブックス、2019年)、『習近平の悲劇』(産経新聞出版、2017年)など多数。

(文責 国基研)