国基研企画委員の田村秀男・産経新聞特別記者は、12月17日、国家基本問題研究所企画委員会にて、『国際金融からみる中国、ロシア』と題して語り意見交換しました。
講演を終えた田村氏は、『国基研チャンネル』第56回にも出演してサマリーを分かり易く解説しました。こちらも下記【概要】と併せてご視聴いただければ幸いです。
【概要】
ウクライナ問題で窮地に立つロシアは米ドル建て金融に反発する。不動産開発大手の恒大集団による債務不履行の問題が尾を引く中国では、金融不安が高まる。これらは決して他人事でなく、世界の金融市場に影響を及ぼしている。
ロシアはウクライナ問題を抱える。このまま緊張が高まると、米国がドル金融を武器に制裁をかけると見込まれる。ただし、この金融制裁はロシアのドル離れを加速させるため、発動には慎重を要する。そもそも、ロシアの外貨準備は、米ドル建てから人民元建てに移行しつつあり、米国に頼らない姿勢を示している。ただし、石油・ガス経済に依存するロシアの弱みは、石油・ガスはドル建てということ。これはロシアのジレンマでもあり、金融市場に不安定要因を与えている。
他方、米超党派の米中経済安全保障再考委員会(USCC)のリポートは、対中投資の急増に危機感を表明した。なぜなら、海外投資家が保有する人民元建て株式と債券の総額は米ドル換算で1兆ドル(約113兆円)を突破。さらに中国当局は香港に米投資銀行JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスの子会社設立を認め、中国経済を外資に開放し、米国の運用資金が中国に流れる仕組みを作ったからだ。ただし、トランプ政権下2019年に成立した香港人権民主法で、米ドル・香港ドル交換停止という切り札は残されている。
さて、日本の位置づけは、米ドル金融と一体の上、日本のカネ余りが中国債務を支えるという構図が見える。邦銀の国際融資と中国の対外金融負債の増減がピタリと符合することからも伺える。日本では投資が行われないからカネ余りになる。その日本のカネが、ウォール街を活気づけ、そのカネが香港を賑わせ、中国債務を支えているのだ。
日本は、自分自身が豊かにならずに中国を支えるという図式から、速やかに脱却する必要がある。主要国の中で回復が見込めないのは日本だけ。バラマキなどの些末な分配手法では経済活性化は成しえない。資本主義経済の原則に立ち返り、研究開発や人材育成などの投資に重点を置き、早期にデフレ脱却することが今こそ求められる。政治のリーダシップに期待したい。
(文責 国基研)