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2021.12.27 (月) 印刷する

「経済安全保障の論点」 細川昌彦・明星大学教授

国基研企画委員の細川昌彦・明星大学教授は、12月24日、定例の企画委員会におけるゲストスピーカーとして、現在その制度整備が進む経済安全保障の論点を語り、櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。

【概要】
○経済安全保障の全体像
経済安保政策上注目すべきは、「脆弱性の克服」と「優位性の確保」である。前者はレアアース、電池、医薬品など、わが国が自律できない分野で、中国依存から脱却して多角化、分散化する必要があるということ。

後者は半導体装置、部材、ロボットなど、わが国産業が優位な位置を占める上で不可欠な分野である。サプライチェイン(SC)を強靭化し、コア技術を育て、守るということが求められる。

○米国の動向
供給網を強靭化する米国の対中戦略は、特に半導体、レアアース、高性能電池、医薬品に重点を置く。同盟国と連携を強化し、国内回帰に舵を切る。

これら機微・新興技術に関して、輸出管理を武器に規制を拡大する米国は同時に、経済安保に関する有志国連携を企図している。日欧との連携とともに、クアッド、インド太平洋といった枠組みもあるが、問題は実態が伴った中身になるかどうか。

○中国の動向
他方、中国の経済安保に関する明示的方針は、軍民融合と国産化である。国内SCを強化するため外資を呼び込み、同時に海外の中国依存を推し進める(双循環)。

国産化政策と一体的に推進しているのが中国標準の策定である。2018年に中国標準化法が施行され、ITC、バイオ技術を始めロボット技術などを重点分野として独自の標準を策定。これを国際標準とするよう国際機関に提案し採用するよう働きかけている。

○半導体、電池、レアアース、医薬品のSC
さて経済安保の産業戦略の中心である半導体については、米中間で熾烈な綱引きが行われている。米中それぞれ5兆円を超える支援策は、なりふり構わない半導体産業の囲い込みともいえる。日本も製造設備、部材の強みがあるうちに、製造基盤の強化を急ぐ。

環境問題ともリンクする自動車産業は、EV化の流れの中、蓄電池が重要産業となり、その生産能力は、数年後、欧州と中国が群を抜くと予想される。日本も生産基盤の強化が急務だ。

コロナ禍で注目を集める医薬品産業だが、これまで開発、製造、販売を製薬メーカーが一括して行っていた(垂直統合)ものが、開発と製造が分離して行う(水平分離)という大変革が起きている。日本もグローバルに通用する産業を育てる政策を進めようとしている。

○企業の経営課題
さて、今後企業経営者が留意すべき点は、経済安保に対応する企業の意識改革である。経済安保のプレイヤーは企業自身だ。企業は輸出管理だけでなく、M&A、研究開発、知財管理などにも目配せをすべきである。そして、安全保障の機微度で技術の仕分けをして技術の管理をすべきだ。

また中国のデータ統制の動きに対して、中国ビジネスでのデータ管理の在り方を見直すべきだ。 (文責・国基研)