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2022.01.25 (火) 印刷する

「軍民協力を推進せよ」 松本尚・衆議院議員・日本医科大学特任教授

医師であり衆議院議員の松本尚氏は、1月21日、国家基本問題研究所の企画委員会にて、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換した。

【概要】
まず、松本議員は前回来所した2020年11月に、新型コロナウイルス対策で意見交換したことに言及した。残念ながらその時提言したことは今になっても生かされていないという。特に非常時における危機管理の体制づくりができていない。

議員は具体的な組織づくりは、軍隊に学ぶべきところが大きいと主張する。つまり欧米の軍や自衛隊の組織は、緊急事態に機能するよう組織されており、これを“Incident Command System”という。これを参考に、政府や民間の組織を作り変えるのである。

例えば、ダイヤモンドプリンセス号での自衛隊医療チームが実践して得たノウハウは、すみやかに全国地方自治体にも共有され、成果を上げたまでは良かったが、組織づくりの思想までは移植されなかった。自身が所属していた地方自治体の新型コロナ感染症対策本部の組織には、指揮官が二人いる他、各部門が並列管理されており、効率が悪く、指揮命令系統が判然としていなかった。これを、前述の組織作りにならい、指揮官の意思が速やかに実行される組織に作り変えることが必要である。

他方、自衛隊側にも民間リソースを活用すべき点があると指摘する。例えば、有事の際に、民間医療チーム出動を要請できるような体制を整えることも必要だ。かつて、G7やG20サミットでは自衛隊と民間の共同作戦を経験したが、非常に有効だと感じた。医療従事者という少ないリソースは有効活用しなければ有事には対応できない。

次に議員は、持参したビデオを上映した。それは自衛隊の医療部門が災害救助の訓練をする映像と、実際の交通事故後の生々しい外傷手術の現場の映像だった。

そもそも、有事にあっては、戦傷者が出ることを想定するのは当然で、平時のうちから準備・訓練しておくべきという。実は、自衛隊側には爆傷などの際の出血性ショックに対応できるノウハウが不足しているそうだ。これは実戦経験がないので仕方ないことだが、民間の救急医療の現場を研修すれば修得できることである。実際、少人数ながらもすでに研修を実施しているという。

最後に、今の日本の混乱状況は平時のルールで非常時に対応していることに原因があるという。まずは平時から有事へ切り替える“Switch”を持つため、国民のマインドを変えなければならない。

救急医療の現場を数多く経験した実績を持つ松本議員の論考は、非常に説得力ある内容であった。

【略歴】
1962年、石川県金沢市出身。1987年金沢大学医学部卒業。専門は救急・外傷外科学、災害医療。金沢大学病院救急・集中治療部、日本医科大学救急医学教授、同大千葉北総病院救命救急センター長などを経て、2021年の衆議院議員選挙で初当選。千葉県医師会理事。フライトドクターとして医療に当たる日本のドクターヘリによる救命救急医療の第一人者。産経新聞「正論」執筆メンバー。

(文責 国基研)