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2022.02.25 (金) 印刷する

『デフレ脱却による格差縮小と成長戦略』 岩田規久男・前日銀副総裁

岩田規久男・学習院大学名誉教授は、前日銀副総裁としての経験などを踏まえ、日本経済の問題について、国基研企画委員会でオンライン講演、櫻井理事長をはじめ企画委員らと意見交換をした。

【概要】
まず、日本が長期的に経済停滞に陥っていることを紹介した。例えば、1990年と2020年の主要国の名目GDPを比較。順位で言えば日本は世界第2位から第3位へと後退しただけ。しかし成長率でいえば、中国は37.5倍、韓国は5.8倍、米国は3.5倍、ドイツは2.4倍、英国は2.3倍へと増加しているのに対し、日本は1.6倍とほとんど成長していない。そもそも1980年代日本の一人当たりの労働生産性と経済成長率は主要国中でも群を抜いて高かったのだ。

この長期の経済低迷は何が原因だったのか。バブル景気による異常な地価高騰を抑えるため日銀は急激な金融引き締めを実施したが、予想を超える景気後退となりバブルが崩壊した。ここからデフレが始まり、総需要が減少、企業収益も減り、雇用減少と就業率低下をもたらした。

デフレ下の成長率低迷の要因を因数分解すると、一人当たり労働時間の減少と、時間当たり労働生産性の低下がある。労働時間の減少は非正規社員の増加による。企業のマインドがデフレにより、投資より収益重視となり、パート雇用にシフトしたからだ。その分を正社員がサービス残業で補えば、生産性が下がるのは自明である。

これらは2013年から始まるアベノミクス(金融の量的緩和、財政出動、規制緩和)により多少改善する。特に、就業率と有効求人倍率は増加傾向に。ただし、デフレ下の企業マインドは変わらず、正社員と非正規社員の賃金格差は未だ解消されていない。

総じて、政府の経済政策は成功したとは言えない。継続するデフレから脱却しようとして掲げた財政政策が、消費増税など非常に緊縮的になり、逆に経済にデフレ圧力をかけることになった。金融政策はインフレを目指したが、財政が物価低下圧力というデフレ・レジームでは、デフレ脱却は不可能である。

では、成長の処方箋は何か。端的に言えば、日銀の「長短金利操作付きQQE(量的・質的金融緩和)」のマイナス金利政策の下、財政の緊縮度を下げれば、デフレは脱却可能である。加えて、労働生産性を上げるため、雇用の流動化、すなわち転職し易い環境を作ることができれば、日本の経済成長は期待できる。

【略歴】
1942年、大阪府出身。東京大学経済学部卒業(1966年)、同大学院単位取得満期退学。上智大学経済学部教授、学習院大学経済学部教授などを経て、2013年3月から18年3月まで5年間、日本銀行副総裁を務めた。学習院大学名誉教授。専門は金融論・都市経済学。著書に『資本主義経済の未来』(2021年、光文社)『「日本型格差社会」からの脱却』(2021年、光文社新書)、『日銀日記――五年間のデフレとの闘い』(2018年、筑摩書房)など多数。

(文責 国基研)