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2022.05.27 (金) 印刷する

「財政・経済の視点から問う防衛予算」 田村秀男・産経新聞特別記者

国基研企画委員の田村秀男・産経新聞特別記者は、5月27日、国家基本問題研究所企画委員会にて、『財政・経済の視点から問う防衛予算』について論じ、その後櫻井理事長をはじめ企画委員と意見交換しました。

講演を終えた田村氏は、『国基研チャンネル』にも出演してサマリーを分かり易く解説しました。こちらも下記【概要】と併せてご視聴いただければ幸いです。

【概要】
ロシアによるウクライナ軍事侵略など昨今の国際情勢を見れば、わが国が防衛予算を大幅に増加する決断をしたことは当然である。5月23日に行われた日米首脳会談では中国を念頭に、米国は台湾への関与やIPEFを、日本は更なる防衛努力を表明した。

これまでの日本の防衛費はGDP比1.00%前後で推移し、21年では6兆円に迫っている。ただし、政府支出は新型コロナ対策で膨張しており、財務省は財政緊縮へと舵を切る中、どれだけ防衛費を伸ばせるかは未知数である。

財務省の方針は、財政法4条に基づく均衡財政が基本である。20年度はコロナ財政で相当な拡張予算となったが、21年度は揺り戻し、22年度は相当な緊縮、その後数年先まで緊縮財政が継続すると見込まれる。つまり、25年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化を目指す目標が足かせとなり、緊縮財政が続くことになる。日本の経済にとって、この緊縮財政はデフレ要因となり、日本の景気回復を遅らせる。

さて、日中の防衛費を比較してみよう。防衛費総額で中国が日本を逆転したのは2006年頃だが、それは中国のGDP増加が急速になった時期に合致する。逆に日本のGDPはほとんど成長していないことから、開きが大きくなるのは当然の帰結といえる。

一方、家計の純資産や海外の対日純負債は増え続けた。国内のカネは海外に出ていくか、家庭にストックされ、国内経済にプラスにならない構造が続いている。日銀がカネを刷ると邦銀が海外融資に回す。すると中国の対外金融債務が上昇する。つまり、日本の余剰資金が中国を太らせる、つまり中国の国防費を押し上げるという構造ができあがる。

国内経済の実態を表す統計として「財務省法人企業統計」がある。それを見ると慢性デフレが始まる20年前から企業の内部留保が増加傾向である反面、設備投資と従業員給与はまったく伸びず、減少さえしている。他方、世界のGDP及び株式時価総額は右肩上がりで、日本だけが取り残されているのが現実だ。

この日本の経済低迷の根幹には、財務省の方針があることを忘れてはならない。新憲法が1947年に施行されたが、同時に財政法ができる。財政法の起案者たる平井平治氏は、著書『財政法逐条解説』で、公債発行を禁止し財政均衡させるのは日本に戦争をさせないため、という論理を展開している。戦前に戦時国債が大量に発行されたことで、戦争遂行が可能になったからだという。戦争を忌避するあまり財政均衡に終始し経済好転策を軽んじるこの戦後の財政法の呪縛から、わが国はいつになったら解放されるのだろうか。

最近の財務省文書(「令和4年度防衛関係予算について」)からも防衛予算に対する財務省の考え方が垣間見える。防衛費増額の財源としては、他の経費を削減するか、国民負担を増やすという選択肢しか提供せず、国債発行など論外という訳だ。ウクライナ戦争を機に国防費を大幅増額したドイツは借入金で賄うというのに対し、わが国は経費削減程度でどれだけ増額できるというのか。

防衛予算増額の財源として「防衛国債」発行を検討する時期にきている。

(文責 国基研)
 
 

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