令和6年1月23日(火)、国家基本問題研究所は、定例の月例研究会を東京・内幸町のイイノホールで開催した。
今回は、中国から帰国したばかりの垂秀夫・前中国大使の基調講演に続き、櫻井よしこ・国基研理事長の司会でディスカッションが行われた。矢板明夫・産経新聞台北支局長が台湾からオンラインで、湯浅博・国基研企画委員はリアルで参加し、熱い発表及び討論が行われ、忌憚のない意見交換が行われた。概要は以下のとおり。
【概要】
●垂秀夫・前中国大使
中国の直面する課題を「変わらないもの」と「変わるもの」という2つの座標軸で分析。まず、「変わらないもの」の一つは共産党のレジティマシー(正統性)である。つまり「なぜ共産党が統治するのか」と言う命題である。この答えに対しては、各時代の指導者が異なる回答を行ってきた(変わるもの)。毛沢東の答えは建国であり、抗日戦争であった。鄧小平は改革開放であった。そして習近平の回答は国を強くすること(強国意識)である。また習近平は、これまでの一党支配体制を「一強支配体制」に変えた。加えて、国家の戦略目標を経済発展から国家の安全に変えた。
中国では外交は内政の延長であり、外交は内政に奉仕する(変わらないもの)。上記のような内政上の変化は中国外交にも大きな影響を及ぼしている。韜光養晦から戦狼外交への変化である(変わるもの)。
現在、中国は米国に対等する存在と認識している一方、アヘン戦争以来の被害者意識は変わっていない。一方で、中国のグローバルサウスの影響力を過小評価してもいけない。中国は、現下の国際政治経済秩序を「より公平かつ合理的な」ものに変更したいと考えている。中国の外交上の主な対象は米国であり、戦略的には「闘争」、戦術的には「安定」を求めており、米中関係は常にその両者の間で揺れ動いている。
●矢板明夫・産経新聞台北支局長
親米路線か親中路線かを占う選挙として世界から注目された台湾総統選の結果は、親米の民進党頼清徳氏が勝利した。しかし、国会に相当する立法院選挙で民進党は過半を取れず、今後の議会運営は困難が予想される。
先の能登半島地震の被害者に対し台湾から25億円を超える募金が集まったように、日台の関係は深い。台湾の民主主義を守るためにも、日本はじめ国際社会は頼政権を支えていく必要がある。
●湯浅博・国基研企画委員
2024年は天下大乱の年になる。ウクライナ戦域とイスラエル・ガザ戦域の2正面に米国は注力せざるを得ない。他方、中国は経済が芳しくなく、今は米中関係の安定を模索しているかのようである。
不安定要因は11月の米大統領選で、仮に予想不能なトランプ氏が次期大統領となれば、世界はトランプヘッジ(備え)を必要とする。それは中国のみならず日本も同様であり、憲法を改正して日米同盟を双務条約にする機会とすべきだ。
●まとめ:櫻井よしこ国基研理事長
本日は始めに、垂大使から中国の見方が紹介されました。矢板氏から台湾の報告もありました。米中関係の狭間に立つ日本です。中国とは摩擦もあるが関係も深い。湯浅氏が指摘したように様々な観点から、もしもの備えを早急にしなければなりません。
戦後、歪な国になってしまった日本は、自分の国は自分で守るという気概が足りません。国基研は1月9日に世を去った田久保忠衛副理事長の御遺志を胸に国家再建に向けまい進するので、皆様には引き続きご支援をお願いします。
詳細は後日、「国基研だより」や国基研ホームページで紹介する予定です。ご期待ください。
(文責 国基研)