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2024.05.31 (金) 印刷する

総合安全保障プロジェクト:中国安全保障動向報告 「聯合利剣‐2024Aの概要」中川真紀・国基研研究員

4月から開始した総合安全保障プロジェクトの一環として中国安全保障動向について中川真紀研究員による定期報告会。8時という早朝の開催にもかかわらず、国会議員をはじめ企画委員など多くの参加を得ました。この総合安全保障プロジェクトの成果は、逐次、国基研チャンネルやホームページ上でも展開いたします。

【概要】
総合安全保障プロジェクトの一環である中国安全保障動向は、月に1回の割合で定期報告を実施している。今回は、中国人民解放軍が5月23~24日に実施した東部戦区の陸海空ロケット軍等による演習「聯合利剣‐2024A」の模様を、オシント情報から分析し紹介する。

〇演習の概要
過去の聯合演習に比べ、実施区域が離島や台湾東部にまで拡大された他、軍が海警を統合し海上封鎖(中国側の認識)を重視した演習であった。また、移動開始から2日間で展開が完了する任務が付与され、より実際的な速戦即決の作戦が演練された模様である。

演習区域については、2022年8月にペロシ米下院議長が訪台した際に設置された航行禁止区域と今回の軍事演習区域の比較では、前回は日本のEEZ内にも設置されたが、今回はすべてEEZ外であり、前回時の日本の抗議や日中韓首脳会議を中国側が考慮した可能性がある。また、今回は台湾東部の花蓮県に最も接近した区域を設定し、台湾政権の域外脱出や米軍等の来援を阻止する意図がうかがえる。

〇主要演練項目
・統合海空戦備パトロール
 今回特に海警が軍と並行して総合法執行演習を行ったことが目を引く。今後海軍と海警の連携が常態化していくことが予想される。また、空域では戦闘機(J-16等)の護衛下で爆撃機(H-6)が台湾東方沖の列島線外からの攻撃行動が見られた。この攻撃の目標は台湾よりも在日米軍やグアムのほうが戦術的には効果的である。演習終了後も空軍機が行動範囲を東に拡大しており、さらなる注意が必要である。

・統合精密打撃
 ロケット軍の状況は、移動発射型弾道ミサイル(TEL)や多連装ロケット砲など、各種火力を統一指揮のもとに迅速に陣地展開していると分析できる。

資料PDF 聯合利剣2024A

資料PDF 画像から見る中国人民解放軍軍の戦力整備の方向性(改訂版)

 今後も引き続き、中国人民解放軍の動きを衛星画像などのオシント情報から分析し、その渡海侵攻能力やBMD突破能力などの状況を把握し、逐次アップデートする予定である。

(文責 国基研)
 
 

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台湾総統就任式後の中国軍事演習を解説

台湾の総統就任式後に行われた中国軍の演習「聯合利剣2024A」は尖閣諸島周辺海域で活動をする海警が中国海軍と統合演習を行うなど、日本の安全保障にも大きな影響が・・。
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