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2024.07.01 (月) 印刷する

総合安全保障プロジェクト 「新『悪の枢軸』戦時体制への対応」岩田清文・国基研企画委員 、「最近の中国海警局の動向」中川真紀・国基研研究員

4月から開始した総合安全保障プロジェクト。その一環として、ロシアを支える悪の枢軸の戦時体制について岩田清文企画委員が、最近の中国海警局の動向を中川真紀研究員が、それぞれブリーフィング。早朝からの開催でしたが、国会議員をはじめ企画委員など多くの参加者がありました。この総合安全保障プロジェクトの成果は、逐次、国基研チャンネルやホームページ上でも展開いたします。

【概要】
「新『悪の枢軸』戦時体制に我が国は如何に対応すべきか」
岩田清文企画委員

ロシアのウクライナ侵略戦争を契機に、ロシア、中国、北朝鮮、イランが相互に協力しあう戦略的パートナーシップを形成。まさに「悪の枢軸」であり、ロバート・ゲイツ元国防長官は、米国と同盟国が敵対する4か国と同時に直面したことは「過去一度もない」と表現した。

例えば、ロシアに対する軍事支援を見ると、弾薬100~150万発(北朝鮮)、弾道ミサイル50発(北朝鮮)、自律式ドローン・シャヘド4600機(イラン)、スロビキンライン(ウクライナ南部に設置したロシアの多重防衛線)建設のための掘削機(中国、2022年で前年比4倍以上)や超大型トラック(中国、2021年比728%増)などを提供する。その他、中国は香港のペーパーカンパニーを通じて半導体、ボールベアリング、工作機械など軍民両用部品をロシアに提供し、ロシアの軍需産業を下支えしているとされる。

他方、ロシアの継戦能力についてだが、人的能力面では、ウクライナ侵攻当初は約19万人態勢。その後死傷者30万人が出ても、昨年に48万人動員後、現在62万人態勢に増大し、予備役招集が不要なほどの人的戦力という状況にある。

物的能力面だが、現在はウクライナが西側から受けるよりも多くの弾薬を生産しており、戦時増産体制をすでに確立している。

総合すると、CIAのバーンズ長官の言葉が端的に示すように「米国が軍事支援しなければ、ウクライナは年末までに敗北する危険性が非常に高い」状況である。もはや世界の工場とはいえない米国の戦時増産体制は心許ない。

特に弾薬は戦争の帰趨を左右するが、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)の試算では、ロシアの弾薬生産量が年間210万発で、これに北朝鮮製を加えれば310~400万発となる。一方、西側は米国に欧州を加えても年間200数十万発が限界である。ロシア側の弾薬生産量が西側のそれをはるかに上回る厳しい現実がある。

わが国のできることは、速やかに防衛装備生産基盤を拡充し、日米の生産体制連携を強化するなど万策を講じ、民主主義陣営の弾薬供給にも貢献すべきである。

 

「最近の中国海警局の動向(2024年5月~6月)」
中川真紀研究員

月例の中国軍事動向の定期報告、今回は「最近の中国海警局の動向」について、南シナ海、台湾海峡、東シナ海で活動する様子を、衛星写真などのオシント情報から分析し紹介する。

まず南シナ海では、中国海警船がスカボロー礁(昨年9月に中国が礁入口に妨害物設置)において比漁船を排除する動きを強化した。5月17日、船舶自動識別装置(AIS)の位置情報を見ると、スカボロー礁で海上民兵の多数の船(放水銃搭載)が海警船とともに確認されている。

さらに、台湾海峡の金門島周辺では、海警船が法執行活動を常態化させ、あるいは他の公船と連携して演習をするなど、プレゼンスを強化している。

尖閣諸島では、6月7日に交代した海警船隊4隻すべてに砲搭載(5月までは1隻)を確認し、わが国領海侵入時にはAISのスイッチを切るものの、それ以外ではAISを発信しプレゼンスを誇示するなど、揺さぶりをかけている。中国海警局報道官は、「日本の最近の一連の負の行動に対する必要な措置」と発言した。負の行動とは、例えば4月に日本の国会議員等が尖閣諸島周辺海域を乗船調査したことを指すと思われ、これを口実にエスカレーションラダーを上げた可能性がある。

加えて6月15日、「海警機構行政法執行手続規定」が施行された。今後、尖閣周辺の日本船舶やその協力者を、出入国管理違反の嫌疑を受けた外国人として拘留する根拠として利用される可能性がある。

今後、海警が海巡(交通運輸部海事局)や海監(自然資源部海洋局)など他の公船と連携し、あるいは海上民兵が尖閣領海内に侵入するなど、エスカレーションラダーを引き上げる可能性があることに十分注意を払うべきである。

引き続き中国人民解放軍などの動きを、衛星画像などのオシント情報から分析し、逐次アップデートしていく予定である。

(文責 国基研)
 
 

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新「悪の枢軸」に抗し万策を講じよ

岩田清文 / 2024.07.01

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第550回 中国海警局 最近の動向

今月、尖閣諸島周辺の日本の領海に侵入した中国海警船4隻は、全てに砲を搭載していた。さらに、中国が、日本船舶や協力者を抑留する根拠となる規定を施行するなど、海警船の活動が活発化する可能性あり。中川真紀研究員が中国海警局の動向を分析します。