1 全 般
11月は実員実射検閲や各隊員の能力検定等の実施している報道が多く確認された。9~10月の訓練最盛期を経て、その成果を確認する時期となっている。
空軍は11月11日に創立75周年を迎え、珠海エアショーで初公開の装備品を含む大々的な展示等、内外へのアピールを行った。エアショーには40か国以上の外国軍や外国企業が参加し、商談やUAV関連シンポジウム等を行っており、ロシアによるウクライナ侵攻以降の中東諸国等の兵器供給先の露から中国へのシフトや中国軍が既に多彩なUAVを装備し、それを有効的に運用する装備開発に注力している可能性が注目される。
また空軍は9回目となる中露共同空中戦略パトロールを実施し、今回H-6N爆撃機とY-20空中給油機が初参加した。前回8回目の共同空中パトロールはロシアの空軍基地を拠点に、ロシア極東地域からアラスカ方面への対米威嚇に中国が協力した形をとったが、今回は中国の空軍基地を拠点に、台湾頼総統が訪問したグアム・ハワイを念頭に太平洋方面での対米威嚇にロシアが協力した可能性がある。頼総統及び訪問を受け入れた米国、そして在日米軍基地の所在する日本に対するプレゼンスの誇示をロシアと共に実施した訓練であった。
台湾に対しては、台湾国防部が「遠海長航訓練」と定義を始めた中国軍用機の台湾東岸への飛行訓練が2回確認された。これまでは聯合利剣等の統合演習時が主であった東部空域へ回り込んだ飛行が通常の訓練でも実施されるようになり、中国が台湾東岸での軍用機の飛行を常態化させつつある。
日本に対しては、尖閣周辺で海警1107が初めて確認された。当該巡視船はジャンタオ級コルベットを改装したもので76mm砲を搭載している。11月の尖閣担当である海警直属第1支隊にはジャンタオ級を改装した海警船が3隻(1107、1108、1109)所属しているが、1108は2023年5月に、1109は2024年7月に尖閣周辺で初確認されている。ジャンタオ級改装海警船は76mm以下の兵装以外は取り外しているものの、水上・対空レーダーや船体の強度等は海軍時代と同等の性能を維持していると思われ、逐次尖閣周辺で航行する海警船の戦力が増強されていると言える。
南シナ海においては、フィリピン大統領が国内の「海域法」「群島航路法」に署名したことに対抗し、「中華人民共和国黄岩島(注:スカボロー礁の中国名)領海基線発表声明」を発出した。中国は1996年に西沙諸島の領海基線は告示しているが、中沙・南沙諸島については明示していなかった。今回、中沙諸島のスカボロー礁の領海基線を示したことから、今後対立が激化すれば南沙諸島の領海基線告示する可能性がある。