公益財団法人 国家基本問題研究所
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2025.01.14 (火) 印刷する

中国軍事動向月報 2024年12月

1 全 般
12月は各部隊において年末検閲(原文:年終考核)が実施され、1年の訓練の成果が確認された。

また、秋季徴兵隊員が新隊員教育を終了し各部隊に配置される一方、冬季退役隊員の退役行事が各部隊等で確認された。

台湾関連では、中国は公表していないものの、台湾周辺で9~12日頃に大規模な軍事演習を実施した可能性がある。2024年5月・10月に台湾周辺で中国軍が実施した「聯合利剣」は東部戦区が主催したが、今回は3コ戦区海軍の活動が確認されていることから中央軍事委員会が主催した可能性があり、そうであればよりレベルの高い訓練と言えよう。また、中国から演習実施の宣言がないことは、アピール目的の政治的な訓練であった「聯合利剣」とは違い、台湾有事の際の当初の海軍及び海警の展開をより実戦に即した形で情報統制しつつ演練した可能性が考えられる。

この軍事演習に関連し、日本周辺での海警船の活動にも特異事象が認められた。

12月の尖閣領海への定期侵入は6日であったが、侵入したのは11月から上番していた直属第1支隊編隊であり、これを増援するような形で直属第2支隊の76mm砲搭載船4隻が尖閣まで航行し、定期侵入後に交代を行った。新たに上番した海警船4隻全てが76mm砲搭載なのは初確認であり、台湾有事の際、尖閣へ76mm砲を搭載した海警編隊4隻を増強して対応する想定で演練した可能性がある。

また、12月に上番した海警船の内、2隻は3000t級・818型であり尖閣周辺海域で確認されたのは初めてである。818型は、海軍のジャンカイⅡ級フリゲート艦の船体をベースとして建造された海警船であり、同2隻は2024年9月以降、日本海から北太平洋においてロシア国境警備局と共同訓練と共同パトロールを実施し、10月には海警船として北極海を初航行した。この際、ヘリを使用したパトロールも実施している。海軍仕様の海警船をヘリの使用も見据えて尖閣周辺で活動させ始めた可能性があり、エスカレーションラダーを上げる準備を整えていると見られる。

南シナ海においては、11月のスカボロー礁領海基線設定を機にフィリピンへの取り締まりを強化しており、12月も継続された。