国基研は2月21日(金)、企画委員会にて、台湾側は来所、米比とはオンラインでつなぎ、太田文雄企画委員をモデレーターとして、櫻井よしこ理事長を始め企画委員らと意見交換した。
【発表者】
日本:中川真紀・国基研研究員
台湾:鍾志東・国防安全保障研究所、林彦宏・台湾安保協会
米国:フレッド・フライツ・アメリカ第一研究所(オンライン)
比国:ロンメル・オン・元海軍少将(オンライン)
【発表テーマ】
・「衛星画像で解析する中国ロケット軍(対日指向)の動向」中川真紀研究員
中国ロケット軍を概観し、日本へ指向可能なミサイル部隊(HGV搭載ミサイル、巡航ミサイル、核ミサイル)に焦点を当てて衛星画像を比較検討すると、日本のBMD突破能力を向上させていることが分かる。
・「人民解放軍による度重なる演習に対する台湾国民の反応」鍾志東博士
近年、中国による台湾威嚇の軍事演習が頻発しており、その常態化には注意を要する。それは中国のグレーゾーン戦術の一環であり、いわゆる三戦(心理戦、法律戦、世論戦)、つまり台湾世論や民衆心理を操作するため、演習という威嚇の手段を常態化させている。しかし台湾人は慣れているので容易に騙されない。
・「中国の偽情報と認知戦の状況」林彦宏博士
中国政府が台湾に仕掛ける偽情報と認知戦は台湾政治を不安定化させることを目的としている。例えばSNSを操作し、偽アカウントを作り、ボット(不正プログラム)を埋め込み、中央政府などに悪意ある噂を流す。また政府のWebsitesへサイバー攻撃し、あるいはメディアを使い宣伝戦を展開する。中国の狙いに気づかないうちに感化される恐れがある。対する周辺各国は連携して対処する必要がある。
・「可能性が高いトランプ政権の台湾政策」フレッド・フライツ氏
新たなトランプ政権のアジア太平洋戦略は同盟国との協力、特に米日韓、QUAD、AUKUSなどを強調する。特にB1B戦略爆撃機を朝鮮半島に派遣し韓国軍や日本の自衛隊と共同演習したことは、米国のアジア太平洋への関与政策を具体的に行動で示している。また国務省はHPで「台湾独立を支持しない」との文言を削除したことも注目される。
・「南シナ海における中国の活動と米Typhonミサイルの比配備」ロンメル・オン・元比海軍少将
中国の海洋戦略は太平洋の端に海洋生存圏を作ることである。そのため、台湾を統一し、東シナ海と南シナ海の海域支配を確立し、中部太平洋で米軍を抑える足場を固めることが必要である。フィリピンは群島国であり、自国海域に十分な注意の眼を向けるため、米軍とTyphonミサイルの演練を実施した。SM6(スタンダードミサイル)やトマホークミサイルが発射可能なシステムは、射程が480kmあり、その効果はフィリピン防衛だけに限られない。
会議の最後に林彦宏氏は、台湾はいま耐えることが求められており、中国が「台湾は攻撃するより買う方が安い」という考えから、グレーゾーンを含め様々なアプローチを仕掛けている。日本をはじめ周辺の同志国がより一層協力する必要があり、今後ともこのような取り組みを継続していきたいと述べ、謝意を表明した。 (文責国基研)