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2011.12.27 (火) 印刷する

「日印経済関係」について意見交換 近藤正規 国際基督教大学上級准教授

 国際基督教大学の近藤正規准教授は12月16日、国家基本問題研究所で、日印経済関係の現況と展望について語り、同研究所の企画委員と意見交換した。特に今後の展望と課題についての同准教授の主な発言要旨は次の通り。

外務省にインド課の設置を
 まず政治外交の課題について幾つかあげてみたい。
1)日印外交を文言だけでなく本当の意味で「グローバルで戦略的」にする必要がある。インドが最も望んでいる原子力協定に向けての政府間協議が遅れているため、欧米や韓国と比べ戦略的な展開がない。2)政治レベルの結びつきを密にすべきである。05年以来、日本の首相は隔年で訪印しているが、首相以外の国会議員はあまりインドを訪問していない。3)外務省の南西アジア課の位置づけが高くない。将来的には、南アジア7カ国を担当する南西アジア課に代わる「インド課」を設置、対印外交を強化したい。

インド市場、長期的視野で
 次に日本がインドでのプレゼンスを高めるための5つの経済上の課題をあげたい。
1)日本の企業は、長期的な視野でインド市場を見ていくことが大切である。例えば、企業のインド担当者の人事査定に関連して、駐在期間を長くして、長い目で査定を行うことが求められる。成功例としてあげられる自動車会社のスズキでは、駐在員のインド滞在期間を最低5年としている。2)自動車や電気、電子以外の進出があまりみられない。インドの小売市場の外資開放が近いとされるが、日本の対応は消極的である。他国の多国籍企業は、インフラから日用消費財にいたるまで、幅広い投資を行っている。3)グローバルビジネスにおけるインドの位置づけを明確にする。日印EPA(経済連携協定)や、印ASEAN、印タイとのFTA(自由貿易協定)、印星EPAなどの活用も検討し、インドを世界戦略に組み込みたい。4)日本企業がM&A(合併や買収)などの形で、出遅れを挽回しようとするのはいいが、その際、対象企業の不動産や金融資産などの調査活動をするデューディリジェンスを行うことが望ましい。5)デリームンバイ産業大動脈構想(DMIC)やデリームンバイ貨物専用鉄道建設計画(DFC)は官民協調の象徴とされているが、DFCの遅れやDMICでは官民の温度差が目立っている。官民のインフォーマル(非公式)な対話の場を広げて、実現性の高いプロジェクトを進めていくべきである。

中国の周辺国との関係を深める 
 インドと中国の政治・経済関係を要約すると、
1)インドからみた中国は、軍事・政治的には脅威の存在であるが、経済的には最大の貿易相手国でもある。マンモハン・シン首相の見方は、中国は信用できないが、経済的には得るものが多い、あえて喧嘩する必要はない、といったところか。2)インドが外交上重視している国は、中国の周辺国である。日本を筆頭にベトナム、オーストラリアなどである。これらの国と経済関係を深めることにより、中国を間接的に牽制しようとしている。3)中国からみると、インドの存在は経済的に小さいため、あまり議論になっていない。

(文責 国基研)