国会の付帯決議で日印原子力協定交渉妥結を
平林博日印協会理事長は1月20日、国家基本問題研究所で「日本とインドの戦略的グローバル・パートナーシップ」について語り、同研究所企画委員と意見交換した。この中で、平林理事長は、懸案となっている日印原子力協定交渉において、インドが核実験を行った場合に原子力協力をストップできることをどう担保するかが問題になっているとし、妥協策として、「日本が原子力協力をストップしうることを協定に明文化することはインドが受ける可能性はないので、協定に書き込むことには固執せず、別途、国会批准の際の付帯決議でその旨を宣言することでもよいのではないか」との個人的見解を明らかにした。
平林理事長によると、米印原子力協定でも核実験と原子力協力のリンクにインドが強く反対したため、結局アメリカは協定の中に条文化することは諦め、米国国内法で処理することで妥協した。つまり、仮にインドが核実験を行った場合、アメリカは、協定の条文に基づくのではなく、米国国内法に従って原子力協力をやめる、ということである。
日本でも協定にこの趣旨の条文を挿入することではなく、協定本体はそのままにして、国会の付帯決議を行えば、インド側も反対する理由がない、と同理事長は語った。さらに、同理事長は、国会の付帯決議には法的拘束力はないが、国会の決議であるから一定の政治的重みはあるし、過去において法律や条約を国会で承認する際に付帯決議はよく用いられた、と述べた。ただ、法律によらず国会の付帯決議で処理するやり方については、NPT加盟国でないインドに対する原子力協力につき根強い反対論があるので、実現が難しいとの見方もある由である。
インドは輸出管理規制外に
また、大量破壊兵器拡散防止のための輸出管理政策では、経済産業省が北朝鮮やイランの企業とインドの企業(国防省と関係の深い)を同列に置き、日本企業が取引をやめるように指定している。この点について、平林理事長は、インドといえども信用はならないとの意見もあるが、「アメリカは徐々に指定から外してきている。日本も段々外すのでは」との見通しを述べた。
平林理事長は、駐印大使(1998-2002年)、駐仏大使(2002-2006年)、査察担当大使(2006-2007年)などを務めている。インド関係で、現役時代から言い続けていることとして、平林理事長は 1)インドは中国に対して対抗意識があり、包囲網を固めたいと思っているが、公に言うのを嫌う。非同盟という遺伝子ともいえるDNAもあるので、インド側の微妙な感情を配慮する必要がある 2)印パと言わないで欲しい。英語で「ハイフナイゼーション」、両国をハイフンで結んで欲しくないとの思いが非常に強い。要するに、インドはパキスタンとは民主主義や軍事的な体制で全然異なっており、格が違うのだ、という自負がある、ことをあげた。
(文責 国基研)