米バンダービルト大学(テネシー州)のジム・アワー教授は3月9日、国家基本問題研究所で「アメリカのアジア戦略」について語り、同研究所の企画委員と意見交換した。アワー教授は、元国防総省日本部長で、アジア太平洋地域を重視するという最近のオバマ政権の方針について、米軍事力が強化されるというのは誇張で、せいぜい現状維持に過ぎない、との見解を明らかにした(3月12日、同研究所ホームページの直言欄に掲載)。その他の主な発言要旨は、次の通り。
市長が国家の安保政策を決める
2006年の日米合意が最善の策であることに変わりはない。特に中国が台頭する中で、沖縄に海兵隊が駐屯するということは重要なことである。(沖縄南部の普天間飛行場のヘリコプター部隊を北部の辺野古近くのキャンプ・シュワブ沿岸部に移転する合意案は、鳩山元首相の部隊を県外移転するという非現実的な“公約”で暗礁に乗り上げてしまった。その結果、普天間と他の6基地の閉鎖を切り離すという新たな日米合意が生まれたが、普天間にヘリコプター部隊が居残ることになるのは明らかだろう。これはFIF(Futenma is forever,普天間の恒久化)になるものだ)。FIFの勝利者は、普天間基地の土地所有者たちである。日本の国家安全保障は日本国の首相が決めるのではなく、名護市長が代わって決定している。
多くの沖縄人が反対しているわけではない
沖縄に駐留したことのあるどの陸軍部隊、或いは海兵隊員も、沖縄がいかに素晴らしく、人々が親切だったかと語っている。もし沖縄の人々全てが米軍基地に怒っているのであれば、沖縄に駐屯しているアメリカ軍人に対しそんなに友好的にはなれないのではないか。私の間違いかもしれないが、沖縄の人々にそんなに強い反米基地感情があるとは思えない。
この数年間沖縄を訪ねていないが、前回訪問した際には那覇で数百人の聴衆を前に日米関係や米基地の役割などについて話をさせてもらった。すると前列にいた一人か二人の大学教授が叫び始め、「あなたは間違っている。沖縄では歓迎されざる人だ。アメリカは沖縄から出ていくべきだ」と主張した。そこで、私は「お意見は拝聴するが、多くの沖縄の人々の意見とは思えません」と反論すると、会場を埋めた数百人の人々が拍手を始めたのです。
結局、私に否定的な質問をしたのは、その教授二人だけで、あとの質問は全て建設的なものであった。
南京事件と沖縄の反基地闘争はそっくり
以前にも言ったことがあるが、日本或いはアメリカで会った人々のうち、日米同盟を最も前向きに支持しているのは辺野古の人たちである。彼らは沖縄県知事も、琉球新報も沖縄タイムズも好きではない。西名護の人々にも好意を抱いていない。彼らはキャンプ・シュワブを指差して「我々の唯一の友人はあすこにいる」と言う。今でも、同キャンプでパレードがある時には、海兵隊員たちは辺野古の人々から贈られた地区の旗を掲げる。
河村たかし名古屋市長について個人的に知っているわけではないが、先の市長の「南京事件発言」について言えば、決して理不尽なことを言っているとは思わない。(市長の父親が兵員として南京に駐屯した際、市民の対応が友好的だったといわれるが)、沖縄駐屯のアメリカ軍と同じケースではないか。新聞を読んでいると、沖縄の人々が毎日、「アメリカ人よ、出て行け!」と叫びながら行進しているように思えるが、実情は逆である。