公益財団法人 国家基本問題研究所
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2012.10.04 (木) 印刷する

追加反論 米知日派の慰安婦問題論文に対して

 ホノルルに本部を置くパシフィック・フォーラムCSISのニューズレターで、ラルフ・カッサ理事長が慰安婦問題について再び論文を掲載したが、国家基本問題研究所はカッサ論文の基本的な誤りに対し、10月4日、櫻井よしこ理事長名の追加反論をCSISに送付した。内容は以下の通りです。

カッサ氏への追加的反論

平成24年10月4日
国基研理事長 櫻井よしこ

 ラルフ・カッサ氏は、平林博氏の寄稿文に対する返答(PacNet #56R)の中で、戦時中の慰安婦問題に関して、「(日本は)法的な議論をやめる必要があるし、目撃者はたくさんいても証拠がないという不誠実な主張をやめる必要がある」と論じた。
 カッサ氏は、慰安婦への補償問題は1965年の日韓関係正常化の際に調印された協定で法的に決着済みという日本側の議論が気に入らないようだ。しかし、個人請求権の問題を含め、戦後処理は条約・協定で決着をつけ、後で蒸し返さないのが鉄則である。そうでないと、永遠に続くことになる。
 1951年締結のサンフランシスコ平和条約で、連合国は国家間の戦争賠償や自国民への個人補償を日本に原則として求めないことに同意したが、日本も戦争で生じた連合国に対する全ての請求権を放棄した。日本国民が原爆投下による民間人数十万人の無差別殺害という国際法違反の非人道的行為に対する損害賠償を米国政府に求めないのは、平和条約を順守するためである。韓国も文明国であるなら、65年の協定による戦後処理を尊重すべきではないか。
 朝鮮人慰安婦強制連行の目撃者がたくさんいるとは、われわれは寡聞にして知らない。戦争中の1943年に朝鮮南部の済州島で強制的な「慰安婦狩り」を自ら実行したと告白する日本人が40年後に名乗り出たが、韓国人記者や日本人研究者が現地で調べても、当時を知る老人たちから裏付け証言を得られず、告白は作り話だったことが判明した。
 その告白内容が翻訳され、いまだに対日批判の根拠となっているのは、極めて遺憾である。

【国基研注釈】
 1910年の併合条約により韓国は日本の統治下に入っていたが、日本の敗戦、韓国の独立で同条約は失効した。韓国は「亡命政権」の存在を根拠に戦勝国として、日本からの賠償を受けることを求めたが、米国をはじめとする連合国は「亡命政権」の正統性を退け、サンフランシスコ条約では韓国への賠償は認めなかった。それで、日韓は平和条約でなく基本条約を結んで国交を結んだ。
 その際、「請求権並びに経済協力協定」で日本が韓国に無償3億ドル、有償2億ドルの資金を供与して「完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認」(同協定第2条)した。なお、当時の日本と韓国の外貨準備が各々18億ドル、1億3千万ドルだったから少ない金額ではない。韓国はこの資金を高速道路、ダム、製鉄所などに大変効率よく使った。韓国政府の調べによると同資金は1966年~75年の10年間の経済成長寄与率年平均20%、経常収支改善効果年平均8%という実績を上げた。

「請求権並びに経済協力協定」
第2条
1 両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサンフランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。(了)

反論第一弾(9/14発表)はこちらから