公益財団法人 国家基本問題研究所
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提言

2009.05.29 (金)

北朝鮮核実験で緊急提言

                                                    平成21年5月29日

 

全面制裁で北朝鮮の核開発を阻止せよ
——いまこそ集団的自衛権と非核三原則の見直しを——

 

 北朝鮮の金正日政権が、4月のミサイル発射実験につづいて5月25日に核実験を行った。今回の核実験は、完全な成功とは言えないが、3年前と比べると顕著な技術進歩が見られた。
 一部専門家はいまだに、米国を二国間交渉の場に引き出すことが目的だ、などと解説している。また、核保有国としての地位を認めさせた上で核軍縮交渉をしようとしているなどの見方もある。いずれも事の本質を理解していない。北朝鮮の核ミサイル開発は単なる外交カードではない。彼らは、日本はむろん米国本土に届く核ミサイルを持つことを戦略目標としている。開発を続けるという前提で、軍事圧力・経済制裁をかわし、逆に支援を得てきたのである。
 北朝鮮の目的は韓国を武力併呑する際に米軍の介入を阻止することだ。そのための米国本土に届く核ミサイル開発である。それこそまさに金日成・金正日体制の根幹をなす戦略であるから、話し合いや見返りの提供で放棄することはない。この現実を認識しなければならない。
 核ミサイル保有を阻止するには開発能力を持たせないことだ。北朝鮮には天然ウランはある。しかし、核ミサイル開発に必要な、様々な技術、機械、素材、部品、エネルギー、外貨などの多くを、日本を含む外国から導入している。それらを徹底的に遮断すること以外に、核ミサイル開発を止める手段はない。
 武力併呑の対象である韓国、韓国と軍事同盟を結ぶ米国、韓国の安全が自国の安全に緊要な日本の三カ国が、北朝鮮の核戦略を正しく認識し、それを阻止することを共通の国家目標として戦略的提携を強めるべきだ。
 北朝鮮に対する抑止力を更に構築しなければならない。そのために、集団的自衛権に関する政府解釈を修正すべきである。さらに、日米韓の核抑止力を高めるために非核三原則を見直すべきである。
 本研究所は発足以来、北朝鮮問題に関して一貫してその本質を指摘し提言を重ねてきた。また、民間の立場から韓国・米国・台湾の政府関係者、専門家らと戦略的対話を重ねてきた。政府レベルでのより踏み込んだ対応が求められる。

 

 以上の認識に立ち、我が国と国際社会が取るべき措置を提言する。

 

1 日米韓三国主導で、全面制裁を実施し、北朝鮮に対するモノ、カネ、ヒトの流れを完全に断つ。
  まず、我が国が全面制裁を早急に実施しなければならない。特に、在日朝鮮人の北朝鮮渡航を原則禁止とし、輸出と送金の全面禁止も直ちに実行しなければならない。その上で、米韓両国に同調を求める。
  米国は、我々が一貫して提言してきたように、テロ支援国再指定と金融制裁再発動を行うべきだ。
  韓国に対して、開城工業団地閉鎖、対北貿易・投資・観光の全面中止、民間レベルの支援遮断などを行うとともに、韓国人拉致問題を国政の最優先課題とすることを求める。

 

2 中国は、前回の核実験を非難した国連安保理制裁決議1718号があるにもかかわらず北朝鮮へのエネルギー・食料支援を続け交易を増やし、北朝鮮の核開発を支えてきた。また、国連難民条約に違反して脱北者を強制送還し続けている。
  日米韓三国は中国に国連決議を守り金正日テロ政権への支援を止めよと、団結して迫らなければならない。中国が国連決議違反を続けるならば、北朝鮮の資金を扱う中国の金融機関への制裁を行うべきだ。

 

3 北朝鮮はイラン、シリアなどに核やミサイル技術を提供し、外貨を得ている。国連安保理はこの流れを断つために船舶と航空機に対する臨検の実施を決議に明記すべきだ。それが不十分な表現になった場合でも国際社会はPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)の枠組みで臨検を徹底的に実施すべきだ。我が国は早急に関連法規を整備して、臨検に積極的に参加する。 

 

4 北朝鮮に対する抑止力を構築するために、集団的自衛権に関する政府解釈を修正し、非核三原則を見直す。ミサイル迎撃能力整備と共に、敵基地攻撃能力の確保に踏み出す。

 

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