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2013.07.19 (金) 印刷する

「原子力規制委員会の対応を強く批判」 奥村晃史 広島大学大学院教授

国家基本問題研究所は6月28日、奥村晃史・広島大学大学院教授を招き、原発問題研究会を開いた。奥村教授は、地震と活断層の関係を研究する専門家で、原発再稼働するうえで問題となっている活断層について原子力規制委員会(田中俊一委員長)の対応の仕方を強く批判した。

奥村教授は、現在の原子力規制委員会の前身の原子力安全委員会で4年間にわたり耐震安全のチェックを行い、国際原子力機関(IAEA)の科学委員を務めてきた。同教授は、研究会の中で、次のような問題点を指摘した。

1)結論から言うと、今の規制委員会は原発の下に活断層があったら、すべて危険だと判断してしまう。地震が起きるかどうか、建物が壊れるかどうか、科学的には証明できない。でも危ないからとのことで廃炉へとつなげる。分からないものは分からない、正しくないものは正しくない、という仕分けをきちんとすべきである。

2)過去10万年で動いた活断層はまた動くだろう。だから耐震設計上考慮しなければいけない。でも、15万年間も動いていないものは、もう動かないと判断していいのではないか。それを40万年前までさかのぼるというのはおかしい。

3)米欧の専門家に聞くと、断層の食い違いだけで全てを考えるべきではない、という。問題は構造物に与える影響であり、工学的に対処できるなら、それをすべきである、としている。下で動いたら、もうすべて壊れておしまいなんだ、という恐怖心を煽る議論が横行している。日本原子力発電が依頼した国際的なレビュー・グループが国際的な常識に照らし合わせてものを言っても、規制委員会側は全く聞く耳をもっていなかった。

4)海外の専門家や工学系の人たちが言うのは、まず確率です。アメリカでもIAEAでも確率論的評価をやっている。ところが、7月8日に施行された原子力規制基準は、がんじがらめの決定論で成り立っており、もう最初から「将来動く可能性がある断層」としています。

5)一部には、敦賀(福井県)はスケープゴート(犠牲のヤギ)ではないか、との推測がある。近くに活断層もあるので、敦賀か、もう一つぐらい潰しておけば、再稼働がスムースにいくのではないか。規制委員会の手柄にもなるし、といった見方だ。

6)今はもう、危険だ、危険だの大合唱で、多くの学会で異論、反対を言い出せる雰囲気ではない。マスコミからは「あいつは御用学者だ」といわれ、排除されかねない。朝日新聞をはじめ、多くのメディアの原子力トラウマでしょうか。イデオロギーかと思う。

7)人間が災害に立ち向かうについて、人命をすべて救えるような幻想を持つ人がいるかもしれない。だが、現実的には、戦争と同じで、一定の消耗は避けられない。災害が嫌なら、地震がほとんどないところに移住する。津波が怖ければ、海辺から離れて暮らす。でも災害のリスクにとらわれて経済活動を損なうというのは、我々の行動パターンにはないことであり、合理的ではない。

(文責 国基研)

13.6.28