訪日中の赤祖父俊一・米アラスカ大学名誉教授は2月21日、国家基本問題研究所で北極圏研究の重要性について語り、北極圏に面する米国、ロシアなど8か国で構成する北極会議に日本が積極的に参加するよう強く求めた。
赤祖父名誉教授は、1999年に日米協力によってアラスカ大学に設置された国際北極圏研究世ンターの初代所長を務め、若手研究者の育成を図ってきた。しかし、日本は北半球に位置するにもかかわらず、南極と比べ、北極圏研究に投入する予算、人材が著しく見劣りする、と教授は指摘した。
同教授によると、北極圏研究の重要性が一段と高まっているのは、以下の理由からである---
1) 地球温暖化など気候変動を予測するうえで、北極圏の研究が大いに役立つ。
2) 化石燃料など北極圏の資源開発が始まっている。
3) 北極海の海氷が大きく減少したことからシベリア海岸に沿った北東航路(英国から見て)の可能性が高まっており、中国や韓国まですでに砕氷船を北極海に投入、航路開発を行っている。
立ち遅れている日本に対し、赤祖父名誉教授は、二つの提案を行っている。
第一に、北極関係の省庁連絡委員会を設置すること。北極会議に昨年、日本も中、韓、印と共にオブザーバー参加したが、極めて専門的な会議であり、外務省だけでは対応するのが難しい。文科、農水、環境、経産各省との連絡委員会を設置してオールジャパンで日本の主張を詰めるべきである。
第二に、北極圏研究を準国家プロジェクトとして立ち上げるべきだ。日本の国立極地研究所(極地研)はその努力を南極事業に集中している。長期計画が重要な北極圏問題に対処するには、南極事業の付属物であっては無理である。極地研内に準国家プロジェクトとしての位置づけが必要である。
参加各国は、将来の北極圏開発への布石、実績作りのため、さらに北極圏問題に対する発言力を得るために積極的な活動を行っており、日本だけがバスに乗り遅れてはいけない、と同教授は訴えている。(文責・国基研)