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2014.11.13 (木) 印刷する

秦郁彦氏と内閣広報官は建設的論戦をせよ 島田洋一(福井県立大学教授)

 現代史家の秦郁彦氏が、2014年11月13日付の産経新聞「正論」欄で、「戦略的な広報外交の強化必要だ」と題して次のように書いている。

〈新聞報道によると、さすがに慰安婦問題などで対外発信力の弱さを痛感した政府は、内閣の対外広報予算を大幅に増額する予定だという。……1年半ばかり前になるが、内閣国際広報室から拙著の『慰安婦と戦場の性』(新潮社、1999年刊)を英訳したいとの要望があり筆者も応諾し訳者も内定したところへ、新任の長谷川広報官から、首相の意向をちらつかせながら「刺激的」な部分を大幅に削除するよう要求された。

この人なら漱石や鴎外の翻訳でも同じ注文をつけそうな見識の持ち主と推察されたので、私の方からご破算にしてもらった。臆病すぎる官僚的な対外広報なら、何もしないほうがまだましと言われないようにしたいものである。〉
2014年11月13日付産経新聞「正論」

重要な問題提起であり、かつ内閣広報官という肩書を明記し、長谷川榮一氏(総理大臣補佐官を兼任)の実名も挙げての批判だけに、いかなる記述をいかなる理由で「削除」するよう求められたのか、秦氏にはさらに具体的に論じてもらいたい。

「首相の意向をちらつかせながら」という一句など、安倍首相にとっても聞き捨てならないはずだ。

首相は、長谷川内閣広報官に対し、しっかり事実を挙げて、反論すべきは反論するよう指示すべきだろう。

対外発信をめぐる議論を深化させるためにも、それは必要だ。なお、首相の指示のあるなしに拘わらず、沈黙してやり過ごそうとするようでは、内閣広報官の資格なしということになる。