historyはhis storyであって、your storyでもなければましてやmy storyでもない。日本からみた歴史と、周辺国家からみた歴史、また実際に日本との外交、交戦に係わった当事国からみた歴史とは、それぞれ別の意味を持つ。真実はひとつだが見方が違うのだ。
私は、個人の人間がそれぞれその出自や環境、経歴によって人格と言うものを形成するのと同じように、個々の意思や思惑が集まってあたかもひとつの人格かのような“国格”なるものを形成するのではないかと思っている。集団によって形成された世論が、各国の見方となり言動を左右していく、という仮説だ。しかし、世論形成が大衆文化によって構成されるとすれば、国家と言う単位があたかも個人の人格と同じような態度を示すことはあながち的外れでもないだろう。ここで注意が必要なことは、平均化された大衆の言動は、第一線で研ぎ澄まされた国際感覚など持ち合わせてはおらず、どの国家も例外なくその標準化点よりもいささか更に低いあたりであるということだ。
ここで必要な国際対話とは、あたかも立場も見解も大いに異なる人物を相手に、心理学的な手法を持ち込んで対話をしていかなければならないということだ。一方的な主張は一気に相手の心を身構えさせる。まずはお互いの立場の違いを明確にし、storyの押し付けをしないこと。そして押し売りを受け入れないことだ。your storyはmy storyではないのだから。
国基研ろんだん
- 2024.07.16
- NATOが見据える「戦争の常態化」 佐藤伸行(追手門学院大学教授)
- 2024.06.25
- インドの総選挙と連立政権 近藤正規(国際基督教大学上級准教授)
- 2024.06.17
- 国は戦死者の発生に備えよ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2024.06.11
- なぜ北は韓国にゴミを送るのか 西岡力(モラロジー道徳教育財団教授)
- 2024.06.10
- 河野氏は閣僚を辞任せよ 有元隆志(月刊「正論」発行人)
- 2024.06.03
- 日米台比越豪の連携で中国に立ち向かえ 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2024.05.28
- 現代戦を国際法の視点で議論することの意義 黒澤聖二(元統合幕僚監部首席法務官)
- 2024.05.27
- 「専守」では防衛できないことが立証された 太田文雄(元防衛庁情報本部長)
- 2024.05.24
- 台湾海峡は日本の生命線 岸信千世(衆院議員)
- 2024.05.22
- ウクライナ侵略戦争は反米枢軸を強化する 湯浅博(国基研企画委員兼研究員)