インドの民間シンクタンク、政策研究センターのブラーマ・チェラニー教授は10月2日、東京・内幸町の日本記者クラブで、国家基本問題研究所の櫻井よしこ理事長をはじめ企画委員と「日印中米をめぐる国際情勢」について意見交換した。チェラニー教授は笹川平和財団主催のシンポジウムに招かれ、訪日した。
ブラーマ・チェラニー氏を囲んで国基研メンバーと
同教授はインド政府の国家安全保障会議の顧問や外相の政策諮問グループの一員を務めるなどインドの戦略研究の第一人者である。
チェラニー教授は、先月下旬、安全保障法案が国会で可決されたことに触れ、より根本的な憲法改正について機運が失われないうちに前進の手立てを講じるべきであるとの見解を表明した。安倍政権関係者は、「来年の参院選挙の結果を見てからだ」というが、自民党が三分の二の議席を獲得できない場合、また憲法改正は先延ばしになるのだろうか、と同教授は疑問を呈した。
また、同教授は、日本の護憲派が信泰する「憲法9条」は、「20世紀の遺物であり、今や憲法制定時とは国際環境が全く違っている。21世紀にふさわしい憲法を」と強調した。
先の米中首脳会談について、オバマ米大統領は習近平・国家主席に対し、南シナ海における中国の埋め立て工事などへの懸念を伝えたが、チェラニー教授が外交筋から得た情報では、大統領は、尖閣については全く言及しなかった、という。オバマ政権には、中国が国際ルールに違反した場合、中国は対価を支払うことになる、との強い姿勢が欠如している、と教授は指摘する。
オバマ政権がフィジーや、イラン、ロシア制裁問題などで見せた政治決定は、いずれも中国を利することになったとの認識が薄いのが米外交の特徴だ、と教授は述べ、さらに、「アジアの近隣諸国にとって今後数年で中国が大変な問題になろう」との見方を明らかにした。
(文責 国基研)